私の起業家人生
~起業から上場、そして 静岡をベンチャースピリッツNo.1へ~
講師 株式会社イノベーション 代表取締役社長 富田直人氏
【講演概要】
将来は家業を継ぐ予定だったが、修行のつもりで入社した(株)
リクルートで鍛えられた。やがて市場の変化などから、起業を目
指す。①得意なこと②好きなこと③伸びていること④1番を取れる
可能性があること、という4つの軸で何をするかを考え、BtoBマー
ケティング事業を行う「株式会社イノベーション」を2000年、東
京渋谷に設立。初期はコールセンター事業とインターネット広告
で伸びたが、リーマンショックと震災で打撃。周りの同世代が次
々と上場することに刺激され、創業事業を整理してIT業界に特化
したメディア事業、マーケティングに特化したインターネットの
ソフトウェア事業にピボット。2016年12月に東証マザーズに上場
した。
しかし、上場後に組織崩壊。大量退職が続き、1年後には、上場
セレモニーで鐘を鳴らした幹部11人は3人に、記念撮影をした24人
は5人になってしまった。理由は、資金調達や知名度向上などのメ
リットがあまり得られず業績が低迷した上に、本来最重要である
「理念」が「上場」に取って代わられて最下位になったこと。社員
全員と面談したが、ますます自信喪失し心身共にボロボロに。ビジ
ネスコーチを3人付け、玉ねぎの皮を剝くようにして、約2年間、本
当の自分とは、を追求した。『嫌われる勇気』という本を何度も読
んだ。結局、自分は承認欲求の塊だったことに気づき、褒められた
いと思うことや周りと比較することをやめた。メンタルを回復し、
Why→How→Whatのゴールデンサークルに基づいて、「生きる目的」
を55歳にして初めて明言化した。それは「成長機会を創り出し人と
組織の可能性を最大化する」ということ。
その実現のために行ったことは4つ。まず、会社をグループ経営
にし、社員のリーダーを社長にすることによって彼らの成長機会を
創り出す。次に、静岡に球団を作ったハヤテインベストメントさん
と一緒にCVCを立ち上げ、スタートアップに投資。そして、静岡県の
起業家を支援する静岡イノベーションベース(SIB)を設立。そのミ
ッションは「静岡県をベンチャースピリッツ日本一の県にしよう」。
この組織は県内の社長に限定した学びと成長の場で、一流経営者か
ら学ぶ月例会、小グループのコーチングを行うフォーラムなどを設
け、現在30名が集まっている。11月7、8日には静岡でLEC静岡という
大イベントを開催予定。30人の上場企業の社長が講演し、500人の集
客が目標。ぜひ、皆さんにご支援、ご参加いただきたい。そして4つ
目は静岡イノベーション奨学事業団(SIS)。県内の大学生と高等専
門学生に給付型の奨学金を支給し、熱い想いを持つ若者を支援する。
公益財団法人に認定。ぜひ、ご支援いただき、オール静岡で学生から
ベンチャースピリッツNo.1をめざすエコシステムを作りたい。
自分が気をつけている4つのこと。①嫌われる勇気を持ち行動する。
②弱みに手を出さない。強みにフォーカス。③調子に乗らない。④将
来ではなく過去に感謝し、それを表す。
最後に、リクルート創業者、江副浩正氏の影響について。彼には
いろいろな評価があるが、リクルートは今超一流の会社になり、OB
は多くの優良企業を作っている。江副さんの「チャレンジし、努力
する」というDNAを自分も引き継ぎ、静岡の皆さんと一緒に発展に寄
与したい。
2024年7月3日(水)21世紀倶楽部総会記念講演会
市政報告「浜松から地方創生」
講師 浜松市長 中野祐介氏
【講演概要】
今日は20年ぶりに新紙幣が発行され、県政では新知事が
誕生し、時代の転換点を迎えた。良い方向に時代が変わっ
てほしいが、円安や自然災害など課題も多数。特に浜松市
は人口減少が問題。現日本郵政社長で総務大臣当時は私の
上司であった増田寛也氏が『地方消滅』という本を出し、
「地方創生」政策が始まったのが2014年。10年後の今年
「消滅可能性都市その後」として改めて警鐘を鳴らした。
浜松市は幸い消滅可能性都市ではないが、この10年人口減
少を止められない。浜松は中部地方第2の都市で大都市圏
へアクセスも良く、豊かな自然環境がある。他地域から来
た人に寛容な風土があり、政令指定都市の幸福度ランキン
グ2022年1位、健康寿命3期連続1位など、日本一市民が健康
で幸福に暮らせる街と言える。そして多くの世界企業を生み
出した「やらまいか精神」のDNAが生きる素晴らしい地域で
ある。しかし、人口は減少の一途。その大きな要因は出生数
の低下と若者の東京圏への流出。このまま何もしないと2100
年には人口37万人になると推計される。浜松は本来、日本全
体の人口減少を食い止め、成長を牽引する街のはず。今こそ
「浜松から地方創生」を実現しなくてはいけない。
「まち・ひと・しごと創生法」が地方創生法の正式名。そ
れをどう進めるか。所帯を持ち子どもを産み育てられる環境
を作り子どもの数を増やす。若者の流出を防ぐために魅力的
な進学先と働く場を用意し、これからの時代の働き方ができ
る「しごとの創生」をする。さらに、子どもを社会全体で支
え、健康で誰もが活躍できる仕組みを作る「ひとの創生」。
そして、街の魅力を高め、安心で安全な街を作る「まちの創
生」。この三つを一体的に進めることが地方創生になる。
今年度の市の予算は7つの柱立てで編成し、総額3,963億円。
これは一般会計の当初予算としては過去最大だ。概略を説明。
分野1 産業経済/ICT企業の誘致を図り、浜松に入るIT人材を
増やす。産業用ロボットの導入支援。小中高校生を対象に地
域の企業、産業を学ぶ機会を作る。中心市街地の活性化。外
国人を地域の経済産業を共に支えるパートナーとして受け入
れる。スタートアップ支援。もうかる農林水産業の実現など。
分野2 子育て・教育/子育てをワンストップ支援する「こど
も家庭センター」を開設。小学校入学前までの医療費無償化、
不妊治療費の支援など。分野3 健康・福祉/中山間地域の医
療助成、浜松医療センターと浜松医科大学の連携を強化する
地域医療連携推進法人の設立準備など。分野4 安全・安心・
快適/豪雨対策、災害対応の強化。交通事故ワースト1から脱
出するための対策など。分野5 環境・エネルギー/自然エネ
ルギーのポテンシャルを最大限生かす。市有施設の脱炭素化
など。分野6 文化・生涯学習/浜松国際ピアノコンクール6年
ぶり開催。プロムナードコンサート40周年記念事業。遠州灘
海浜公園篠原地区への多目的ドームスタジアム設置を見据え、
周辺地域の整備など。分野7 地方自治・都市経営/浜松の良
さを多くの方に知ってもらう「浜松学」を広げる。その他/
2050年脱炭素社会の実現を目指し「カーボンニュートラルの
街・浜松」としても世界に発信。
行政だけでなく、地域の皆さんとともにオール浜松で「元
気なまち・浜松」を実現したい。