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イベント関連:月例セミナー

日時:2019年11月 5日 10:00 投稿者:pt21c

講師:
航空自衛隊 第一航空団司令兼浜松基地司令 加治屋秀昭 氏
  ブルーインパルス飛行隊長付 2等空佐 遠渡祐樹 氏

演題:「空に描く匠の技」

【講演概要】


 ブルーインパルスは宮城県松島基地の第4航空団に所属
する「第11飛行隊」の愛称。華麗な展示飛行を披露する専
門のチームで、もともと浜松基地で誕生した。
 アメリカから譲り受けたF-86Fが初代機種で、昭和33年
に北基地ができた際に3機で曲技飛行をしたのが最初とな
る。当時はジェット戦闘機自体が珍しく低空での曲技飛行は
非常に難しいものだったが訓練を重ね、昭和39年東京オリン
ピックでは空中に五輪を描き演技の素晴らしさを世界中に
知らしめた。現在は全国の航空祭や国のイベントなど年間
20回ほど披露する機会がある。チームワーク(和)を大事に
するためパイロットは高度な操縦技術はもちろん、協調性、
誠実性、安全性などの人間性が求められる。さらに広報と
しての存在意義があるため観客に夢を与えるスター性、フ
レンドリーさも不可欠。そして何より「事故を起こさな
い」という厳格な安全意識が肝心だ。
 一番機から六番機で編成され、パイロットは各ポジショ
ン(各番機固有の位置)で専属に技術を一子相伝で養成さ
れるのが特長。見習い期間はTR(Treaning Ready)、
一人前になるとOR(Operation Ready)と呼ばれる。
今年4月に着任した遠渡祐樹2佐は現在一番機のTR。
ORに認められると展示飛行を行い、3年目になるとまた
新たな後輩を指導しながら任務に当たる。特に一番機は
編隊をリードする役割で全て一番機の指揮に従って動く
要となる。飛行機同士が互いの距離を測る計器は付いて
いないため、角度と距離はパイロットの目視で何回も
訓練して覚えていく。その日の体調や気分により感覚が
変わることもあるため精神的な安定も重要課題。
そう考えると披露する会場中心点上空を何時何分何秒に
通過するかを編隊全部で揃えることは実に難易度が高い
ことが分かる。またスモークを出すタイミングも地上で
パイロット全員が顔を合わせ一番機の号令で息を合わせ
る練習を何度も繰り返して修得する。世界各国にアクロ
バット飛行チームはあるが、空中にスモークを使いハー
トや星などの絵を描くのは類がないだろう。これは
T-4による展示飛行が始まってからスタートした。戦闘
機パイロットは、酸素マスクの付いたヘルメットやG(加
速度)によって脳に血液が供給できずに失神することを
防ぐ「Gスーツ」を着用している。背面飛行では体が浮い
て操縦桿に手が届かなくなってしまわないようしっかり体
を固定する。パイロットの負担はもちろんだが飛行機のオ
イル供給システムに限界があるため、継続時間は10~15秒
が限界。こうしたことを踏まえて曲技のプログラムを構成
している。
 「ブルーインパルスは先輩方の培った伝統のある飛行
隊。ORになった暁には、飛行隊の歴史を大切しながら
新たに進化できるように引っ張っていきたい」
                 (遠渡2佐談)


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