日時:2021年11月 4日 16:32 投稿者:pt21c

講師:静岡大学 工学部長 喜多隆介氏
演題:世界を変えた革新技術
~静大工学部卒業生の活躍~
【講演概要】
 静岡大学工学部のルーツは1922年に設立された「浜松高等工業学校」
(関口壮吉初代校長、理念/自由啓発)。開校の2年後に高柳健次郎先生
が赴任しテレビジョンの研究を開始。ブラウン管による電送・受像に
世界で初めて成功した。そして静大卒業生の春山丈夫らが国産テレビ
第1号を開発。1953年日本で初めてテレビ受信機が発売された。
 現在コロナ禍で先行きが見通せない状況が続く。しかし高柳教授は
じめ先輩方は太平洋戦争と重なる過酷な中を熱い情熱で乗り越えた。
「コロナくらいでへこたれるな」というメッセージを感じている。
 小柴昌俊東京大学教授からニュートリノを検出する施設「カミオカ
ンデ」建築のため、世界最大の光電子増倍管開発を依頼されたのが浜
松テレビ(現浜松ホトニクス)。当時8インチが世界最大のとき、要求さ
れたサイズは25インチ。予算目途も立たない中、晝馬輝夫社長は快諾。
ガラスバルブを均一に吹き上げることは至難の業だったが、鈴木賢次
開発担当の尽力により開発成功。これがカギとなり「ニュートリノ」
が世界初観測された。
 日本ビクターは昭和45年当時、ビデオ事業に着手。赤字続きの中、
高野鎮雄事業部長はわずか数名の極秘プロジェクトチームで開発を継
続。6年の努力の末にVHSを完成させ、その技術を国内外のメーカーに
惜しげもなく公開した。
 1960年代、静岡大学 岡部隆教授のもとに藤田欣司・坂本求吉・下平
忠良が集まった。諏訪精工舎で腕時計開発に挑み、クオーツ時計の超
小型化・超省電力化だけでなく高性能を実現させた。
 1969年会社存亡の危機にあった本田技研工業では、河島・久米チー
ムがF1レースで培ってきた技術を一般エンジンに持ち込み、4年をかけ
て低公害エンジン「CVCC」を実現させた。またエンジンの鬼と称され
た新村開発担当はF1エンジンを一から設計し直し、1965年F1参戦わず
か2年目に優勝の快挙を成し遂げた。
 この他、国産ロケット開発(日本航空電子、小島)、消せるボールペ
ン開発(パイロット、千賀邦行)、自撮り棒発明(ミノルタカメラ・上田
宏)など、静岡大学出身者の活躍は数多い。
 現在大学で注目されているのが川人祥二教授のイメージセンサー開発。
8K超高解像イメージセンサーは先の東京オリンピックでも活躍し、超高
感度イメージセンサーは月明り程度の明るさでも鮮明に撮影することが
可能だ。
 私自身は「超高効率電力輸送用高温超伝導材料」を開発。当研究室で
開発した超伝導材料は2021年5月時点で、世界トップの磁束捕捉能力を
有している。超伝導ケーブルにより電力輸送の損失をゼロに近づけるこ
とで省エネが可能になる。このケーブルを使い世界を結ぶことが私の夢
だ。
 静岡大学は浜松キャンパス100周年記念事業の中で、人材育成に向け
た寄付をお願いしている。是非ご協力を。


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