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イベント関連:月例セミナー

日時:2023年3月 1日 13:38 投稿者:pt21c

ウクライナ侵攻から 1 年
国際情勢の展望と日本の針路
講師 共同通信社編集委員 太田 昌克 氏
【講演概要】
毎年NATO加盟国を中心に約40カ国の首脳や閣僚らが出席して
行われるミュンヘン安全保障会議。今年59回目を迎え、ウクライナ
情勢を中心に米中対立や今後の国際秩序の展望などについて活発に
議論された。
ウクライナ侵攻から1年、今回この会議にロシア当局者は招かれ
ず、ウクライナのゼレンスキー大統領はオンラインで参加し「ロシ
アを倒すには武器が必要」と訴えた。
オブザーバー資格で会議に出席した私が取材で印象に残った言葉
をいくつか紹介する。ドイツ、ショルツ首相は「長い戦争になる
備えが肝心。ウクライナへの武器支援はするが、意図せぬエスカレ
ーションを避けるためにもバランスが重要]と語り、戦闘機供与に
ついては肯定せず。アメリカのカマラ・ハリス副大統領は「ロシア
は人道に対する罪を働いた」と正式に断定しプーチン大統領への絶
縁状とも呼べる発言が印象的だった。この他プーチン研究者として
知られるアメリカの大学名誉教授は「プーチンは4つの州全てを支
配下に置くまで戦争をやめないだろう」、元英国防大臣はロシアに
は強大な核戦力が残っていると話し、追いつめられると大変なこと
になる恐れもと示唆した。
 プーチン大統領はロシアとウクライナは「ひとつの民族」であり
「一つの国家」という考えを持っている。一方ロシアにとってNA
TOが東方拡大を進め、ミサイル防衛システムを拡大しているのが
安全保障の大きな懸念。ブッシュ(子)政権時代にアメリカが弾道
弾迎撃ミサイル制限条約を勝手に脱退し、裏切られた思いを強くし
たのだろう。
 さらに、大量破壊兵器が見つからず、結果的にウソの大義でアメ
リカが先制攻撃したイラク戦争もプーチンが「触発」されたのが大
きな鍵だとプーチンの元側近は語る。ロシア国内で反プーチンデモ
が勃発した背景にも「西側勢力が裏にあるのではないか」と疑り、
独自の歴史観と世界観に根差した情念が高ぶり戦争を始めたのでは
ないか。
 いまだこの戦争の出口は見えない。バイデン大統領は筋金入りの
リベラリスト。大統領はこの戦争を「民主主義VS専制主義」の戦
争とみなしており、中途半端に終わらせるつもりはない。「大統領
を辞めるまで戦争が終わると思っていないだろう」と明かす元側近
もいる。「長い戦争」になれば物価高騰、食糧危機など我々の生活
も大きな影響を受ける。同時に激化する米中対立、さらに北朝鮮核
問題が米国のみならず世界的な景気後退に結びつく恐れもある。
 こうした中、武器支援も充分な経済支援もできない日本が停戦に
向けてできることは何か。それは心のサポート、それをテコにした
外交力の発揮ではないか。被爆体験をしている日本だからこそ「核
使用だけは絶対に許さない」との断固たるメッセージを発信できる。
岸田総理にキーウ訪問を求めたい。皆さんも今後の動向に注目して
ほしい。


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