日時:2023年3月31日 14:32 投稿者:pt21c

大河ドラマ「どうする家康」を活用した地域振興について
講師 浜松市産業部観光・シティプロモーション課課長 北嶋秀明 氏
【講演概要】
 徳川家康公が浜松で過ごしたのは29歳から45歳までの17年間。
これまで浜松市が「出世の街」としてプロモーションしてきたこ
とが今回の大河ドラマ放送のタイミングに活かされていると感じ
ている。
 古沢良太氏の脚本にも注目。三方ヶ原の戦い、本能寺の変、
小牧・長久手の戦い、大坂夏の陣というドラマに描かれる4つ
の山場のうち3つが浜松時代の話。弱小な小国大名が右往左往
し、気が付けば天下人になっていたという新しい視点で描かれ
た家康(松本潤)、可憐な瀬名(有村架純)、平和を愛する息子信
康(細田佳央太)との家族愛を通し、瀬名と信康の最期の場面で
は、きっと多くの視聴者が心を動かされることだろう。
 この他、井伊直政や本多忠真、夏目広次など各登場人物も魅
力的。それぞれの逸話が数多くあるので地域活性に活かせると
思う。実際に曳馬城主だった田鶴が登場した回は曳馬城(元城町)
や椿姫観音(元浜町)などが紹介され、翌日には多くの見学者が
訪れた。書籍『どうする家康』はドラマのベースになっている
ので、ビジネスチャンスを考える教科書として参考になると思
う。
 ドラマ館は3月18日グランドオープン。館内は「五感で感じる
世界観」を表現し、入館すると浜松城内にいるような感覚を楽
しめる。実際の撮影セットを展示しているのは浜松のみ。三方
ヶ原の戦い放映時期には展示替えもするので、何度も訪れてほ
しい。
 浜松市では情報発信のため、特設WEBサイトや公式ツイッ
ターを開設したところ、フォロワー数は順調に増加している。
観光周遊促進のため遠州全体の周遊マップを作成し、マップと
GPS情報を連動させる案内をスタート。地域交通機関と連携
した電子周遊チケットも販売している。家康公ゆかりの史跡で
は、スマートフォンをかざすことで発掘調査現場の様子が再現
されるなどXR(クロスリアリティ)体験機能も整備した。
 皆で盛り上げる大河ドラマ館にしようと、芝生広場周辺のア
スファルトや館内床面にドラマ出演者へのメッセージを自由に
書く市民やファン参加型のイベントも好評。また歴史家やキャ
スト等を招いた講演会や「どうする家康出陣式(今年1月)」を
実施した際には、3000人定員に約20倍の応募があるなど、
松本潤(嵐)ファンのパワーを実感した。5月5日には出演者
による「騎馬武者行列」を浜松市中心部で開催する予定。
 今回の大河ドラマに関連する動きの中で、私たちが特に力を
入れたのは「家康公ゆかりの地」(全国20都市以上)との連携だ。
相互の人間関係を創り上げながらドラマを活用し、誘客による
経済貢献を目指す取り組みは、ドラマ終了後にも大きな力にな
ると考えている。皆さんもぜひ今をビジネスチャンスと捉え一
緒に地域を盛り上げてほしい。

日時:2023年3月 1日 13:38 投稿者:pt21c

ウクライナ侵攻から 1 年
国際情勢の展望と日本の針路
講師 共同通信社編集委員 太田 昌克 氏
【講演概要】
毎年NATO加盟国を中心に約40カ国の首脳や閣僚らが出席して
行われるミュンヘン安全保障会議。今年59回目を迎え、ウクライナ
情勢を中心に米中対立や今後の国際秩序の展望などについて活発に
議論された。
ウクライナ侵攻から1年、今回この会議にロシア当局者は招かれ
ず、ウクライナのゼレンスキー大統領はオンラインで参加し「ロシ
アを倒すには武器が必要」と訴えた。
オブザーバー資格で会議に出席した私が取材で印象に残った言葉
をいくつか紹介する。ドイツ、ショルツ首相は「長い戦争になる
備えが肝心。ウクライナへの武器支援はするが、意図せぬエスカレ
ーションを避けるためにもバランスが重要]と語り、戦闘機供与に
ついては肯定せず。アメリカのカマラ・ハリス副大統領は「ロシア
は人道に対する罪を働いた」と正式に断定しプーチン大統領への絶
縁状とも呼べる発言が印象的だった。この他プーチン研究者として
知られるアメリカの大学名誉教授は「プーチンは4つの州全てを支
配下に置くまで戦争をやめないだろう」、元英国防大臣はロシアに
は強大な核戦力が残っていると話し、追いつめられると大変なこと
になる恐れもと示唆した。
 プーチン大統領はロシアとウクライナは「ひとつの民族」であり
「一つの国家」という考えを持っている。一方ロシアにとってNA
TOが東方拡大を進め、ミサイル防衛システムを拡大しているのが
安全保障の大きな懸念。ブッシュ(子)政権時代にアメリカが弾道
弾迎撃ミサイル制限条約を勝手に脱退し、裏切られた思いを強くし
たのだろう。
 さらに、大量破壊兵器が見つからず、結果的にウソの大義でアメ
リカが先制攻撃したイラク戦争もプーチンが「触発」されたのが大
きな鍵だとプーチンの元側近は語る。ロシア国内で反プーチンデモ
が勃発した背景にも「西側勢力が裏にあるのではないか」と疑り、
独自の歴史観と世界観に根差した情念が高ぶり戦争を始めたのでは
ないか。
 いまだこの戦争の出口は見えない。バイデン大統領は筋金入りの
リベラリスト。大統領はこの戦争を「民主主義VS専制主義」の戦
争とみなしており、中途半端に終わらせるつもりはない。「大統領
を辞めるまで戦争が終わると思っていないだろう」と明かす元側近
もいる。「長い戦争」になれば物価高騰、食糧危機など我々の生活
も大きな影響を受ける。同時に激化する米中対立、さらに北朝鮮核
問題が米国のみならず世界的な景気後退に結びつく恐れもある。
 こうした中、武器支援も充分な経済支援もできない日本が停戦に
向けてできることは何か。それは心のサポート、それをテコにした
外交力の発揮ではないか。被爆体験をしている日本だからこそ「核
使用だけは絶対に許さない」との断固たるメッセージを発信できる。
岸田総理にキーウ訪問を求めたい。皆さんも今後の動向に注目して
ほしい。


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