講師:浜松市長 鈴木康友氏
演題:浜松市政報告~「Withコロナ時代」の自治体経営~
【講演概要】
浜松市は民間力によって自律的発展を遂げてきた都市。広大な市域に
過疎地域を含み、膨大なインフラ(管理道路)を抱えるため、行政コスト
がかかる「日本の縮図型都市」と言われるが、だからこそ「頑張って成
功すれば浜松が全国のモデルになる」と考えている。今後人口減少が進
む中、持続可能な都市経営のためには、いかに活力ある街にできるかが
勝負だ。
産業政策では企業立地・誘致支援により新たにロボット産業が花開く
可能性が広がっている。海外へのビジネス展開支援も活発で、ジェトロ
浜松(日本貿易振興機構)は最も相談件数が活発な支所になっている。
さらにスタートアップの誘致・育成事業の成果が評価され、大都市圏と
肩を並べ「スタートアップ・エコシステム拠点都市(内閣府)」に認定さ
れた。第一次産業にも力を入れ、農業では経営感覚を持ったリーダーを
育成し、多くの成功例が報告されている。
世界はSDGsの時代。エネルギー対策において、浜松は市町村別太陽光
発電導入容量全国第一位を誇り、昨年は2050年までに二酸化炭素排出実
質ゼロを目指す「浜松市域"RE100"宣言」を行った。「FSC森林認証」を
活用した持続可能な森林経営に取り組み、天竜材のブランド化も進めて
いる。多文化共生社会づくりも先進地域。2017年には世界の多文化共生
都市との連携を促進する「インターカルチュラル・シティ・ネットワー
ク」にアジアの都市で初加盟を認められた。SDGsでも日本をリードする
都市と自信を持っている。
コロナ問題に関しては、平時に財政健全化していたことでスピーディ
に対策できた。「安全・安心な飲食店認証制度」やパーテーション会食
の推進も早急に実施し、飲食代のキャッシュバックキャンペーンなども
大成功した。地場物産のオンラインアンテナショップ開設や、フードデ
リバリープラットフォーム「浜松FOODELIX」の構築など、オリジナルの
システムづくりも進んでいる。
豊かな自然環境と都市機能のバランスの良さ、首都圏とを結ぶ恵まれ
た交通アクセス、開放的な人柄など「日本一暮らしやすい街」と評価さ
れる浜松。「Withコロナ」社会は柔軟対応が必須だ。そのためにも持続
可能な将来を見据えた区の再編を進め、時代の変化に合わせた柔軟で効
率的な組織運営と住民サービスの向上を図っていく。そしてデジタル化
を加速し、行政手続きのみならず医療・健康分野等における実証実験を
行うことで「デジタル・スマートシティ」に向けて取り組んでいく。
「出世運が根付いた歴史文化」「健康寿命日本一を誇るパワーフード」
「ビーチ・マリンスポーツの聖地」など浜松地域の特性を生かしたプロ
モーションも手ごたえを感じている。全国規模の撮影支援件数は年々増加。
昨年から連載スタートの漫画『焼いてるふたり』は浜松の魅力が詰まった
作品として注目されている。老朽化した建物を新たな使い方で魅力アップ
させるリノベーションも着実に成果を上げている。今後ますます、魅力あ
る浜松を皆さんと盛り上げ、広く発信をしていきたい。
2025年7月3日(木)21世紀倶楽部総会記念講演会
市政報告「元気なまち・浜松へ」
講師 浜松市長 中野祐介氏 【講演概要】
今年2025年は昭和100年、戦後80年。浜松市にとっても12市町村の合併から20周年という節目の年。2007年には政令指定都市になった。現在の浜松市の最大の課題は人口の減少。浜松は魅力あふれるまちで、人口の減少は本来あるべき姿ではない。その理由の一つは、子どもが生まれないこと。2023年の出生数は4,561人で10年前より約3割減少。婚姻数も10年前は4,000組以上だったが、2023年には2,928組でやはり3割減少。婚姻数の減少が出生数減少の大きな要因だと思う。もう一つの理由は、市域外とりわけ東京圏への人の流出。東京圏への社会移動をグラフ化すると、15歳から29歳の世代は圧倒的に転出超過になっている。人口減を食い止め、成長するまちに変えるためには、この二つを中心に対策しなくてはいけない。ワークライフバランスを実現できる安定した仕事、社会全体で支える子育て、安心安全に暮らせる魅力あふれるまち。そのような「まち・ひと・しごとの創生」を進めることが「元気なまち・浜松」を作る唯一の方法である。
今年は浜松市の新しい10ヵ年計画、総合計画基本計画が始動。「ウェルビーイング」という視点を取り入れ、まちづくりの基本理念のもと、分野横断的に施策を実施するという計画で、当初予算、一般会計4,160億円規模という過去最大の予算を計上した。基本計画分野として、産業経済、こども・教育、安全・安心・快適、環境・くらし、健康・福祉、文化・スポーツ、地方自治の7つに分けて施策を取りまとめている。
産業経済の分野では、海外展開事業化可能性調査費助成事業をスタート。そして浜松・インド経済交流推進事業。インド工科大学ハイデラバード校(IITH)と連携し、秋にはリクルート活動に行く。農林水産業については、他産業との連携による付加価値向上の取り組みを支援、天竜美林のカーボンクレジット創出モデル事業、漁獲が減っている浜名湖アサリの総合対策事業。こども・子育てでは、ワンストップで支えられる仕組みづくり。浜松市は「こどもまんなか応援サポーター」宣言をしている。こどもの権利擁護環境整備、放課後児童会の拡充、デジタルを活用した不登校支援を進めていきたい。
安全・安心については、遠州鉄道(株)と公共交通維持についての研究、盛土の対策、浜松環状線の4車線化、水道管路・施設の耐震化などを計画的に実施。文化・スポーツについては、西図書館が一条スマートタウンに移転し、多様なニーズに対応した図書館としてオープン。30年を経過したアクトシティは順次改修。大ホールは次の浜松国際ピアノコンクール後に休館に入り、音楽の都にふさわしいホールとしてリニューアルする予定。スポーツについても、浜松アリーナをリニューアルする。
浜松は全国でもまれな県庁所在地ではない政令指定都市。浜松の皆さんが一丸となって「やらまいか」の精神で、再び元気な浜松を作ろう!と盛り上げていただければと思っている。