演題:『賀茂真淵今、国学とは』
講師:賀茂真淵翁遺徳顕彰会会長 山下 智之氏
【講演概要】
万葉集を愛した国学者賀茂真淵(1697年誕生)は菅原道真と同様、学問の神様であり浜松
にとって偉大な人である。旧浜松市歌をはじめ、浜松一中(現県立浜松北高)、
浜松商業高校など多くの校歌に真淵のことが歌われていることからも、
立派な人物であることが郷土に知れ渡っていたことが分かる。
真淵は国学者荷田春満に師事し、春満の後任に抜擢され江戸に向かった。
春満は享保の改革の八代将軍徳川吉宗の御用学者であり、真淵は吉宗の
次男・田安宗武を教授し、その息子が寛政の改革の松平定信である。
さらに天保の改革の水野忠邦は浜松の縣居神社の前身「縣居霊社」に揮ごうするなど、
江戸の3つの改革はどれも根底に国学の精神が流れている。
戦国時代から幕末にかけては海外の文化が日本に押し寄せた。ペリー来航当時、
高杉晋作14歳、坂本龍馬18歳、吉田松陰24歳、西郷隆盛26歳、勝海舟30歳の若者たちが
日本の事を真剣に思い、個々に考えを出した若き先人たちが国を造りあげてきたことを
覚えていてほしい。そして、日本は外国の文化伝来で発展したことは確かだが、
鉄砲が伝来した際には、それを真似て自ら造り上げる能力を既に持っていた。
さらに古くは、中国の漢字には無い国字も独自に生み出してきた。
現在も日本には、「ミノルタ/実る田んぼ」や
「花王の月マーク/いつでも変化できる月の満ち欠け」など、
国学の精神を象徴している企業も多い。こうした根底に流れる国学こそが、
「ものづくり日本」「ものづくり浜松」となった大きな要因だと思う。
これからますます国際化社会が進む中、私たちは真の日本人でなくてはならない。
それにはまず日本史と国語を学ぼう。英語が話すことができても古文書を
読むことができないのは悲しいことだと思う。「頭を雲の上に出し...」で知られる
童謡「ふじの山」は賀茂真淵が詠んだ「駿河なる富士の高嶺はいかづちの音する
雲の上にこそ見れ」という歌を元に作られている。私たちは知らず知らずに国学を
身に付けていながら知らないことが多い。「明き(明朗)」「浄き(清廉)」
「直き(素直)」という「誠」の心を神髄とする国学をしっかりと学び、
我が浜松も地域性を活かしてがんばる街でありたいものである。
ノーベル物理学賞受賞の天野浩教授、文化勲章を受章した静岡文化芸術大学理事長の
有馬明人教授等、賀茂真淵を祀る縣居神社を参拝した人は、大成すると言われている。
ぜひ多くの方に参拝して頂きたい。
20 21 年 6月 23 日( 水) 21 世紀倶楽部 総会・記念講演会
講師:浜松市長 鈴木康友氏
演題:浜松市政報告~「Withコロナ時代」の自治体経営~
【講演概要】
浜松市は民間力によって自律的発展を遂げてきた都市。広大な市域に
過疎地域を含み、膨大なインフラ(管理道路)を抱えるため、行政コスト
がかかる「日本の縮図型都市」と言われるが、だからこそ「頑張って成
功すれば浜松が全国のモデルになる」と考えている。今後人口減少が進
む中、持続可能な都市経営のためには、いかに活力ある街にできるかが
勝負だ。
産業政策では企業立地・誘致支援により新たにロボット産業が花開く
可能性が広がっている。海外へのビジネス展開支援も活発で、ジェトロ
浜松(日本貿易振興機構)は最も相談件数が活発な支所になっている。
さらにスタートアップの誘致・育成事業の成果が評価され、大都市圏と
肩を並べ「スタートアップ・エコシステム拠点都市(内閣府)」に認定さ
れた。第一次産業にも力を入れ、農業では経営感覚を持ったリーダーを
育成し、多くの成功例が報告されている。
世界はSDGsの時代。エネルギー対策において、浜松は市町村別太陽光
発電導入容量全国第一位を誇り、昨年は2050年までに二酸化炭素排出実
質ゼロを目指す「浜松市域"RE100"宣言」を行った。「FSC森林認証」を
活用した持続可能な森林経営に取り組み、天竜材のブランド化も進めて
いる。多文化共生社会づくりも先進地域。2017年には世界の多文化共生
都市との連携を促進する「インターカルチュラル・シティ・ネットワー
ク」にアジアの都市で初加盟を認められた。SDGsでも日本をリードする
都市と自信を持っている。
コロナ問題に関しては、平時に財政健全化していたことでスピーディ
に対策できた。「安全・安心な飲食店認証制度」やパーテーション会食
の推進も早急に実施し、飲食代のキャッシュバックキャンペーンなども
大成功した。地場物産のオンラインアンテナショップ開設や、フードデ
リバリープラットフォーム「浜松FOODELIX」の構築など、オリジナルの
システムづくりも進んでいる。
豊かな自然環境と都市機能のバランスの良さ、首都圏とを結ぶ恵まれ
た交通アクセス、開放的な人柄など「日本一暮らしやすい街」と評価さ
れる浜松。「Withコロナ」社会は柔軟対応が必須だ。そのためにも持続
可能な将来を見据えた区の再編を進め、時代の変化に合わせた柔軟で効
率的な組織運営と住民サービスの向上を図っていく。そしてデジタル化
を加速し、行政手続きのみならず医療・健康分野等における実証実験を
行うことで「デジタル・スマートシティ」に向けて取り組んでいく。
「出世運が根付いた歴史文化」「健康寿命日本一を誇るパワーフード」
「ビーチ・マリンスポーツの聖地」など浜松地域の特性を生かしたプロ
モーションも手ごたえを感じている。全国規模の撮影支援件数は年々増加。
昨年から連載スタートの漫画『焼いてるふたり』は浜松の魅力が詰まった
作品として注目されている。老朽化した建物を新たな使い方で魅力アップ
させるリノベーションも着実に成果を上げている。今後ますます、魅力あ
る浜松を皆さんと盛り上げ、広く発信をしていきたい。