日時:2022年5月31日 11:54 投稿者:pt21c

講師:浜松市感染症対策調整監 浜松医療センター感染症管理特別顧問  矢野 邦夫 氏
演題:With コロナ下の感染対策

【講演概要】
 新型コロナウイルス感染症の正式名は「COVID-19」、病原体名を「SARS-CoV-2」と呼ぶ。
 2002年のSARSは発症前の患者が感染源となることはなかったが、「COVID-19」は潜伏期
間でも周囲に病原体を感染させるためゼロコロナにすることは不可能。これからはWithコ
ロナの考え方で、たとえ感染しても重症化しないことを目指し対策をとることが大事。
 我々は既に「ワクチン」と「3CLプロテアーゼ阻害薬」という2つのテクノロジーを手
に入れた。これらがあれば、今後は「咳エチケット」と「手指消毒」の感染対策で良いと
考える。
 新型コロナウイルスは空気感染しないが、飛沫感染やエアロゾル感染に注意する必要が
ある。飛沫が飛ぶ距離は約1mのため、WHOは「少なくとも1m以上あければ飛沫は届か
ない」としている。飛沫より小さなエアロゾルという粒子は部屋内に留まりやすいので感
染対策が必要。さらに飛沫が過酷な空気中を飛んで感染する空気感染は結核や麻疹などタ
フな病原体のみで新型コロナウイルスでの心配はない。
 新型コロナウイルスが環境表面で感染性を保つ期間は、プラスティック表面では3日と
される。病原体の付着した手指で鼻腔などに触れて体内に侵入するため、手の触れる場所
や自身の手を消毒する。濡れた手は病原体を吸いつけるので非常に危険なため、手洗い後
はペーパータオルや乾燥機でしっかり乾燥させることが大切だ。
 ワクチンには従来型の「たんぱく質系」と今回のコロナワクチンとして使用したmRNAな
ど「核酸系」の二つがある。ファイザー、モデルナもオミクロン株になってから感染・発
症予防効果は落ちたが重症化予防は維持されている。ブースター接種やさらにプロテアー
ゼ阻害薬の効果によって、Withコロナでも重症化を防ぐことができると考えている。
 私個人的には「7月頃からマスクはやめたほうがいい」と思っている。理由は熱中症の恐
れはもちろんだが、コロナの影響で通常幼少期に感染すべき感染症(サイトメガロウイルス
など)に初感染できていないことが問題。成人し妊婦などが感染すると出生児に障害を発生
させる恐れもあるため、感染させるべきウイルスがあることも考えなくてはならない。
 そして冬時季は脳梗塞なども増加し、マスク撤廃による感染症流行と重なったときの医療
逼迫も心配。そのため早めにマスクを撤廃し、重症化対策に重きを置いたWithコロナ対策へ
と転換すべきだろう。
 こうした考えを著書『感染対策 超入門』(一般者向け)、『ウィズコロナ時代の感染対策』
(医療従事者向け)に記したので参考にしてほしい。

日時:2022年5月 2日 15:32 投稿者:pt21c

講師:第一生命経済研究所 熊野英生 氏
演題:脱炭素化に向けて、世界が動き出す
   ~日本の展望を考える~
【講演概要】
 ロシアのウクライナ侵攻で我が国が最も影響を受けているのは原油価格の高騰だろう。
欧州連合のロシア制裁が進む中、日本はロシアから天然ガスを購入するサハリン計画が
進んでいたこともあり、今後の対応を深く考えなくてはならない。さらにCo2排出に対
し課税する「炭素国境税」によってロシアを困窮させたい欧米の意図もあり、カーボン
プライシング(二酸化炭素排出量に応じて企業や家庭が金銭的なコスト負担をする仕組み)
が急速に進むことが予想される。課税メカニズムが日本の産業に大きく影響してくる可
能性があることを理解してほしい。
 我が国のCo2削減には発電と工場対策が重要になる。原発は3・11以降日本でほとん
ど稼働していないが、エネルギーコストを下げるためには有効。しかし国民の原発稼働
に対する反発もあり原発話題はタブー視されたままの状態が続いている。このまま何も
議論しないのは不健全。しっかり議論したほうがいいだろう。
 そして今後カーボンプライシングの税収は再生エネルギー事業に回されていくことが
予想され新たなビジネスチャンスになる。再生エネルギーは需要と供給のバランスコン
トロールが難しいため、LNG(液化天然ガス)へのシフトも考えられる。この分野は日本
の製造業で研究が進んでいるので今後有望なのではないだろうか。
 もうひとつ極めて重要なのが自動車など輸送手段の電動化だ。炭素国境税が促進され
れば新たな次世代エコカー補助金など政府が関与しながらさまざまな制度設計が加速し
ていくだろう。
 こうした中、ビジネスチャンスとして注目されるのがCo2を吸収させる技術。大気中
のCo2を化学物質で吸着させるDAC法や、石油・天然ガスから水素やアンモニアを取り出
すときに発生する高濃度Co2を吸着させるCCS法などの研究が進んでいる。さらに農業を
通した究極のエコ事業を実現できる可能性もある。不耕起農業を進めることで大地にCo2
を吸収させる研究も始まっている。
 このように2030年までに起こるとみられる経済転換はビジネスチャンスの機会ではあ
るが、これまで収益を得ていた旧来産業がうまく転換できるかが大きな課題になる。環
境、社会、企業統治に悪影響のある企業に投資を控える「Esg投資」が進めば負の遺産を
増やしてしまうことも考えられる。
 現在のロシア制裁が我が国の産業に大きなインパクトを与え、今後の経済転換によって
新たな南北格差が生じてくることも十分理解し、これからの産業活動に取り組んでいただ
きたい。


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