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イベント関連:月例セミナー

日時:2025年2月28日 12:08 投稿者:pt21c

「トランプ2.0時代」の日本と世界
講師 共同通信社編集委員 太田昌克 氏

【講演概要】
 去年は世界人口の4割以上の国で国政レベルの選挙が行われた、稀に見る選挙イヤーだった。その結果、フランスではマクロン大統領の与党が大敗、イギリスは14年ぶりの政権交代。さらに日本もアメリカも、オセロを裏返すように政権交代が起き、現職受難の年だった。一方ロシアでは、プーチン大統領が5期目をかけた選挙で史上最高の87.33%の得票率となり、自分の政策、そして侵略戦争の正当性を国内に誇示した。しかし、東京の在外投票ではプーチンと書いた人は半分程度だったとの情報も耳にした。得票率はこの数字に遥か届かなかったと聞いている。多様な情報によって有権者が賢い選択をすることを示唆している。メディアの職責は重いと改めて思う。
 アメリカ大統領選挙では、精彩を欠くも辞める気配の無かったバイデン氏に民主党の大重鎮であるペロシ氏が引導を渡してやっと撤退。メディアは接戦を当初、予想したが選挙は開票から1~2日で実質終了。旧知の民主党有力者よると敗因は「コロナ明けのインフレ、移民急増、犯罪多発への国民の不満と怒り、民意をトランプ陣営がうまく読み取りSNSを利用して浸透」「ハリス氏はわずか4ヶ月弱の選挙戦でバイデン氏との差別化を図る現状打破の政策を磨けなかった」から、とのこと。選挙前、7月13日の銃撃事件は衝撃だったが、テロ専門家によるとこの手の事件がもっと早く起きなかったことが驚きだったという。アメリカでは政治信条による分断、憎悪がそれほど増大している。
 「トランプ2.0」で心配されるのはインフレ再燃。理由は移民の大量追放による人手不足、関税強化による小売価格の上昇、大型減税継続による需要の増大。日米の金利差が縮まらないので円安が続く。就任1週間でパナマ運河の返還要求、メキシコ湾を「アメリカ湾」に、パリ協定離脱などいろいろやっている。世界各地での国際開発局(USAID)の援助も大幅カット。トランプ政権1期目の大統領補佐官を務めたボルトン氏は関税が最も心配だと指摘、実はトランプ氏は全く関税の理屈をわかっていないと取材に語った。日本も気をつけた方がいいと言われたが、それは現実となりつつある。
 石破総理とトランプ氏の初の首脳会談では、共同文書を作るのに外交バトルがあったようで、トランプ政権は「ルール」、「国際法」、「法の秩序」、「自由で公正な貿易」という言葉を受け入れなかった。トランプ氏は力を信仰し、力で相手をねじ伏せる外交を展開している。日米関係は前途多難だ。さらに石破氏は今後も内政のハードルが多く、巳年の2025年は12年に1度の参院選と都議選が同時に行われる年でもある。可能性は高くないが、内閣不信任案が成立したら都議選、参院選に加え、衆院選のトリプル選挙になるかもしれない。
「燈燈無尽」という言葉を紹介したい。政治家、ジャーナリストは社会の一隅を照らす1本のろうそくでなくてはいけない。これが政(まつりごと)の要諦。その灯りが次のろうそくを灯し、無限のものにならなくてはならない。市民も政治貢献を。
 最後に、昨年話題になった映画「オッペンハイマー」の原作者である歴史家マーティン・シャーウィン氏の言葉。「歴史は、それがそのように生じる定めにあったから生じたのではなく、権力ある地位にある個人が特定の選択肢を選んだから、そのように生じたのである」。歴史がどう進むかは全て人間の判断。しかもそれは、権力を持って人々の暮らしに影響を与える人の判断である。いかに政治が大事か。私たちは決して無関心ではいられないはずだ。


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