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イベント関連:月例セミナー

日時:2023年5月 2日 11:17 投稿者:pt21c

暴れ天竜を地域全体で制する
~金原明善翁の夢のつづき~
講師 国土交通省中部地方整備局浜松河川国道事務所
事務所長 名久井 孝史 氏
【講演概要】
天竜川は山林の多い急峻な地形を通るため土砂が出やすく、
昔からたびたび氾濫を繰り返してきた。長年の治水事業によ
り洪水被害は少なくなったとはいえ、近年は気候変動の影響
で全国各地で想定外の洪水が頻発。今後の気象状況によって
は洪水発生頻度が約4倍になるとの予測もある。
現在天竜川の基本的治水対策は「川中の掘削による流下能
力アップ」「護岸整備」「管理施設の維持修繕」のほか、既
存ダムに洪水調節機能を整備する機能再編事業など。しかし
激甚化する水害に堤防だけの対策は不可能なことは明らか。
そのため流域全体での治水対策を進めている(詳細後述)。
こうした国事業の思想根源には金原明善の影響を大きく受
けている。幕末に誕生した明善は40代に全財産を投じて天竜
川の治水対策をスタートし、技術者養成の水利学校を設立し
た。植林事業に着手した50代には金融業で事業資金を構築。
財テク知識を活かし、増やした資産を植林事業へ投資し続け
た。
開通したばかりの東海道線を木材運搬に利用したり、枝打
ちしやすいオリジナル鎌を開発したり、植林による投資の呼
びかけをするなど、時流をつかみながら技術開発し、皆が幸
せになる経営戦略を進めた実績は実に見事。
3年前から国が流域治水対策の取り組みをスタートしたの
は「流域全体を見て治水すべき」という明善の考え方に注目
したことが大きい。以来遠州流域の治水協議会を設立
し、あらゆる関係者が一体となって流域治水を進めようと取
り組んでいる。
具体的プロジェクトは、公共施設等を活用した雨水貯留施
設を整備したり、危険エリアの建物を移転促進したり。さら
に住民一人ひとりが自分の防災行動計画を立てる取り組みも
推進。各企業で水害対応の事業継続計画(BCP)を立てるこ
とで被害を抑えることができた実例も報告されている。
昨年9月の大雨では最も危険度の高い「緊急安全確保」が
5回も発令されていたにも関わらず、ほとんどの人が避難し
ていなかった。今後、警報の分かり難さの課題改善を図って
いくが、皆さんは命を守るために「躊躇なく逃げる」ことを
念頭においてほしい。
危険なだけでなく河川には楽しい水辺空間があることもポ
イント。スポーツや記念イベント、最近ではドローンの国家
試験場などさまざまに活用されている。地域のにぎわいづく
りの社会実験として要望に応えていくので積極的に利用して
ほしい。


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