光技術による社会貢献と高付加価値化への挑戦 講師 浜松ホトニクス株式会社 代表取締役社長 社長執行役員 丸野 正 氏 【講演概要】 当社は1953年創業、従業員約6,000人。2023年9月期で売上2,214億円。 研究開発費に120億円を使っている。私たちの心には常に高柳健次郎先生 がいる。「女神の前髪を掴め」という言葉。常に先回りをし、女神の前に 出て前髪を掴む。人のまねではなく自分独自のことをやる。先生の弟子 の堀内平八郎が創業した当社に流れるマインドは、「自主性を重んじる」 こと。「できないと言わずにやってみろ」という風土でチャレンジできる 環境が整っている。 まず、スーパーカミオカンデ。岐阜県飛騨市神岡鉱山の地下1,000m。直 径39.3m、高さ41.4m、5万トンの純水を蓄えたタンクの壁一面に11,000本 の光センサ光電子増倍管を設置。ここで宇宙から飛んでくる素粒子の一つ、 ニュートリノを観測する。2002年に小柴昌俊先生が超新星爆発に伴ったニ ュートリノの観測に成功してノーベル物理学賞を受賞。2015年にニュート リノに振動があることが発見され、梶田隆章先生がノーベル物理学賞を受 賞。現在は直径68mのハイパーカミオカンデに40,000個相当の検出器を設 置し、2027年からの観測開始を目標としている。またここでノーベル物理 学賞を受賞される方が出てほしいと切に願っている。 次に、1983年に始めたPET、Positron Emission Tomography(陽電子放 出断層撮影法)。正常細胞ががん化すると糖を代謝。そこにブドウ糖18F- FDGを注射するとがんの病巣に集まり放射線を放出。それを検出し、がん を早期発見する。この事実は当社で検証し学会で発表した。PET研究の発 端は、人はなぜ戦争をするのか脳機能を解明して世界平和を実現しよう! という当時の社長の発案。1988年には世界の脳科学者を集めて浜松で脳・ 精神科学平和探究国際会議を開催。この会議は現在も続く。2002年には PET検診は保険適用となり、浜北の中央研究所の中に浜松PET診断センター を設立。2019年からはアルツハイマー型認知症の原因となる脳内のアミロ イドPET検査も開始。PET検診は多くの企業で取り入れられている。「歳を取 っても健康で元気に暮らせる社会の実現」が研究のゴール。SDGsの3「すべ ての人に健康と福祉を」に貢献。 もう一つはレーザ核融合発電。核融合の原理は、海水中に無尽蔵にある重 水素、三重水素をカプセルに入れて全方位からレーザを照射、圧縮し、別の レーザで点火、燃焼して、飛び出した中性子の運動エネルギーを熱エネルギ ーに変換して発電するというもの。原発で行われる核分裂は連鎖的反応で制 御が難しいが、核融合は一度きりの反応で、二酸化炭素なども排出しない。 研究の発端は人口増加による食糧不足問題の解決だった。そこで大出力レー ザ光を使った植物工場を構想。1997年から核融合発電に必要となる大出力レ ーザの開発に着手。2006年には浜松ホトニクス産業開発研究所を設立した。 このような研究所を持つ民間企業は世界で唯一。着々と技術確立を進めてい る。SDGsの7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」に貢献。 当社はソリューションプロバイダーとして課題解決し高付加価値製品を提 供。その対価でさらなる貢献をする付加価値創造サイクルで活動。光を使っ て未知未踏領域を開拓することで、人類に役立ち、生き様を変えるような新 しい産業を創成する心意気で研究開発を進めている。
2024年7月24日(水)21世紀倶楽部月例セミナー
光技術による社会貢献と高付加価値化への挑戦
講師 浜松ホトニクス株式会社 代表取締役社長 社長執行役員 丸野 正 氏
【講演概要】
当社は1953年創業、従業員約6,000人。2023年9月期で売上2,214億円。
研究開発費に120億円を使っている。私たちの心には常に高柳健次郎先生
がいる。「女神の前髪を掴め」という言葉。常に先回りをし、女神の前に
出て前髪を掴む。人のまねではなく自分独自のことをやる。先生の弟子
の堀内平八郎が創業した当社に流れるマインドは、「自主性を重んじる」
こと。「できないと言わずにやってみろ」という風土でチャレンジできる
環境が整っている。
まず、スーパーカミオカンデ。岐阜県飛騨市神岡鉱山の地下1,000m。直
径39.3m、高さ41.4m、5万トンの純水を蓄えたタンクの壁一面に11,000本
の光センサ光電子増倍管を設置。ここで宇宙から飛んでくる素粒子の一つ、
ニュートリノを観測する。2002年に小柴昌俊先生が超新星爆発に伴ったニ
ュートリノの観測に成功してノーベル物理学賞を受賞。2015年にニュート
リノに振動があることが発見され、梶田隆章先生がノーベル物理学賞を受
賞。現在は直径68mのハイパーカミオカンデに40,000個相当の検出器を設
置し、2027年からの観測開始を目標としている。またここでノーベル物理
学賞を受賞される方が出てほしいと切に願っている。
次に、1983年に始めたPET、Positron Emission Tomography(陽電子放
出断層撮影法)。正常細胞ががん化すると糖を代謝。そこにブドウ糖18F-
FDGを注射するとがんの病巣に集まり放射線を放出。それを検出し、がん
を早期発見する。この事実は当社で検証し学会で発表した。PET研究の発
端は、人はなぜ戦争をするのか脳機能を解明して世界平和を実現しよう!
という当時の社長の発案。1988年には世界の脳科学者を集めて浜松で脳・
精神科学平和探究国際会議を開催。この会議は現在も続く。2002年には
PET検診は保険適用となり、浜北の中央研究所の中に浜松PET診断センター
を設立。2019年からはアルツハイマー型認知症の原因となる脳内のアミロ
イドPET検査も開始。PET検診は多くの企業で取り入れられている。「歳を取
っても健康で元気に暮らせる社会の実現」が研究のゴール。SDGsの3「すべ
ての人に健康と福祉を」に貢献。
もう一つはレーザ核融合発電。核融合の原理は、海水中に無尽蔵にある重
水素、三重水素をカプセルに入れて全方位からレーザを照射、圧縮し、別の
レーザで点火、燃焼して、飛び出した中性子の運動エネルギーを熱エネルギ
ーに変換して発電するというもの。原発で行われる核分裂は連鎖的反応で制
御が難しいが、核融合は一度きりの反応で、二酸化炭素なども排出しない。
研究の発端は人口増加による食糧不足問題の解決だった。そこで大出力レー
ザ光を使った植物工場を構想。1997年から核融合発電に必要となる大出力レ
ーザの開発に着手。2006年には浜松ホトニクス産業開発研究所を設立した。
このような研究所を持つ民間企業は世界で唯一。着々と技術確立を進めてい
る。SDGsの7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」に貢献。
当社はソリューションプロバイダーとして課題解決し高付加価値製品を提
供。その対価でさらなる貢献をする付加価値創造サイクルで活動。光を使っ
て未知未踏領域を開拓することで、人類に役立ち、生き様を変えるような新
しい産業を創成する心意気で研究開発を進めている。