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イベント関連:月例セミナー

日時:2025年2月 6日 15:04 投稿者:pt21c

「最近の金融経済の動向」
講師 日本銀行静岡支店長 蒲地久司 氏

【講演概要】
 日本銀行の機能はまず、お札を発行する「発券銀行」。静岡には国立印刷局があるが、同一市区町村に日銀支店とお札の印刷工場があるのは静岡市だけ。次に「銀行の銀行」。金融機関が受け付ける大量の取引が最終的には日銀当座預金口座を通じ決済される。そして「政府の銀行」。日銀には政府の預金口座があり、国税や社会保険料、年金等が出し入れされ、金融機関も日銀の代理店としてその業務を行う。このほか日銀は、消費者物価の前年比上昇率+2%を物価安定の目標として金融政策を行っている。
 海外経済は総じて緩やかな成長が続く。米国は個人消費を中心に堅調な成長。ただ、トランプ新政権は前回よりインフレ率が高い状況からスタートする中で関税引上げを掲げるなど、インフレを通じ世界経済に悪影響を与えるリスクがある。一方、中国は住宅の価格が下がる中で在庫も積みあがっているほか、若年失業率が高い。国策でEV車の普及・輸出に取り組むため、日本のガソリン車メーカーの同国向け輸出も苦戦。欧州は観光、サービス業は元気だが、中国と競合するEV車にシフトし過ぎた自動車産業をはじめ、製造業は低調。
 国内経済は、実質GDPは緩やかに改善。日銀短観でも景気が良いと考える企業が多い。企業収益は高く、設備投資も増加。家計部門では、富裕層は大変活発。富裕層以外でも、食品・日用品は節約して旅行・外食等に使うメリハリ消費がみられる。賃金の上昇もあって全体的に個人消費は悪くない。
 消費者物価は、12月に前年比+3%となるなど、+2%を超えた数字が続く。円安もあり原材料・エネルギーを含む輸入品の値段が高止まっているほか、足元はコメ価格の上昇も影響。ただ、これはいずれ一巡するため、賃金と物価の好循環が続けば+2%程度に落ち着いていくことが見込まれる。こうした中、日銀政策委員会は、昨年、政策金利をプラスとし、先週も0.5%に引上げたが、物価上昇率を除いた実質金利はなおマイナスで、金融緩和の状況が続く。同委員会では、引き続き経済の状況等を点検しながら政策金利を引き上げ、緩和の度合いを調整していく方針。
 静岡県経済について。短観によると、非製造業だけでなく製造業でも、トランプ政権の関税政策や中国での日系自動車メーカーの不振等を背景に、先行きへの不安が幾分高まっている。
 日銀支店長が会長を務める静岡県金融広報委員会では、金融経済教育に注力。これに関連して支店長講演でも関連する話題を紹介することがある。例えば、住宅をいつどこで取得するかはライフプランに大きく影響するが、静岡県は、静岡や浜松に都市が分散しているため、経済力・利便性の観点から生活し易い割には地価が安いこと。また、72を金利(複利)で割ると元本が2倍になる年数がわかる「72の法則」を使えば、仮に物価が毎年+2%上昇し続けると36年で物価が倍となり、タンス預金の価値が半減する計算。金融リテラシーを高め、運用も考えようと紹介している。
 日銀静岡支店では見学を随時受け付けている。10~20名で申し込めるので、ぜひどうぞ。


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