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イベント関連:月例セミナー

日時:2024年3月 5日 15:08 投稿者:pt21c

2024年の政局展望
講師 共同通信社編集委員兼論説委員 久江 雅彦 氏
【講演概要】
 裏金問題や予算審議の大詰めの今、岸田総理は9月の自民党総裁
選での再選を確実に狙っているのは間違いない。現在自民党支持率
は極めて低いが、あわよくば6月通常国会会期末で解散ができるほ
ど支持率を上げ、最後の勝負をかけたいと考えているはずだ。その
とき注目されるのが定額減税。賃上げやデフレ戦略としての経済政
策を岸田政権は売り物にしたい。さらに、3月韓国、4月バイデン
との首脳会談、5月ブラジルと予定されている外交効果で支持率ア
ップを描いているだろう。したがって3月4月の世論調査で支持率
が上がるかどうかが6月解散の指標になる。解散できなければ、総
裁選に出馬しないまま退陣することになるだろう。
 これまでの世論調査を分析すると、岸田政権は一昨年8月まで高
い支持率だった。しかし安倍氏の国葬を焦って決定したことや、そ
の後の統一教会問題で急降下。昨年1月には一度上がり始めたもの
の、長男の公邸内での忘年会騒ぎやマイナンバーカードの滞りで再
び低下し現在に至る。「内閣支持率と自民党支持率を合わせ、50
%を割ると赤信号」という青木の法則(内閣官房長官を務めた青木
幹雄が提唱したとされる内閣の安定度を示す経験則)に照らし合わせ
ると、いつ辞めてもおかしくない状況。4月28日の衆議院補欠選
挙(東京15区・島根1区・長崎3区)で負ければ、自民党の大激震
は必須。すると、党内キングメーカーである菅氏と麻生氏の二人が
鍵を握り、ポスト岸田の動きが本格化してくるだろう。
 次の総理が誰かは誰も分からない。世論の支持を見ると、支持率
一位は石破氏、二位が小泉氏、三位に最近急浮上の上川氏の名前は
挙がるが、石破氏も自民党内の基盤は弱い。一般と党内での支持が
重なる人ほどポスト岸田になる可能性は高いが、現在両者は整合し
ていないのだ。
 裏金問題で政治倫理審査会に総理が出席することになったのも、
与野党駆け引きではなく安倍派との攻防が本質だろう。3月中旬まで
に自民党の処分が決まり、その後は政治資金規正法の改正によって
前向きな話に方向転換していくと思う。
 自分は政治部で30年政治家を見てきた。つくづく思うのは政治
家とは「人間を操縦できる人」であること。学力や政治偏差値の高
さ、ディベートで勝つことより、さまざまな人間を束ね多数派を創
り上げることが重要だ。田中角栄、小泉純一郎、安倍晋三など長期
にわたり総理を務めた人は人を使う能力が高い。
 自民党は純然たる組織政党ではない。地域の代表と業界団体の掛
け合わせだから強い。そして個人の集まりだから派閥ができるのも
当然といえる。選挙制度改革ができ30年になるが、小選挙区制と
国民の支持分布との乖離を解決することが今後の大きな政治課題だ
と思う。


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