講師:第44代 第1航空団司令兼浜松基地司令 熊谷三郎 空将補 演題:「我が国周辺の安全保障環境と航空自衛隊の現状について」 【講演概要】 海に囲まれる日本は人やモノの交流は海や空を介し、領空(領土・領海 の上空)は 他国の航空機が許可なく飛行はできない決まりだ。しかし我が 国の周辺は強大な軍隊・航空機などを持つ極東ロシア軍や北朝鮮、中国など の国が取り巻いている。 北朝鮮は頻繁に核実験や弾道ミサイル発射を行い、昨今では弾道ミサイル の距離延伸化を進めている。また日本の防衛システムをかいくぐるハイスピ ードの技術研究を検証していると聞いている。ロシアについては時々爆撃機 を日本一周飛行させることがあり、この動きは爆撃機の力を誇示するためで はないかと考えている。また特に中国は活動が活発化し、自衛隊戦闘機がス クランブル発進領空侵犯の恐れがある侵入機に対する軍用機緊急発進)する 回数がここ10年で20倍近くに増えている。 こうした中、有事はもちろん平時も我が国の空を守る唯一の存在が航空自 衛隊だ。我々の任務は我が国の防衛(国民の生命と財産を守る)が最大目的。 そのための教育・訓練を行うと同時に、全国28か所の地上レーダーサイト と4か所の防空指令所で24時間365日の警戒監視を実施している。また 対領空侵犯措置や弾道ミサイル防衛、災害派遣、国際平和協力活動など平時 における公共の秩序維持も大切な役目となっている。 「対領空侵犯措置」は、レーダーが領空に近づく航空機を感知すると戦闘 機が緊急発進。パイロットは目視で行動監視をし、近づいた際には「移動せ よ」とアドバイスする。従わず領空侵犯された場合は「直ちに出ていけ」と いう警告 へと切り替え「強制着陸」させるが、これまでに強制着陸させた事 実はない。「弾道ミサイル防衛」ではミサイルが探知されると自動警戒管制 システムが日本の領土・領海に着弾しないかを即座に計算。危険と判断する とイージスBMDシステムによって大気圏外で攻撃する。万が一失敗した場 合はペトリオットPAC-3で攻撃し着弾を防ぐ。 教育訓練については「一般教育」と「技術教育(飛行教育・術科教育)」 がある。パイロットや整備はもちろん、通信、警備、 衛生など多種多様な 専門内容をすべて自衛隊内の学校で学び訓練しているのが特徴といえる。 日米防衛協力については 平素から互いの理解と意思疎通を深め、共同訓練 等を実施している。2015年に見直されたガイドラインには、これまでに 無く同盟強化について深く言及され、外に対して強い抑止力となるメッセー ジになっている。 また米国だけでなく世界さまざまな国との防衛協力・交流も推進中。航空 幕僚長が各国の空軍司令官とハイレベル交流を積極的に行うほか、部隊間や 実務者交流も進めている。これにより「日本は平和を愛し平和貢献している 国」ということを発信し理解してもらうことが非常に重要だと考えている。
2020年 11月 20日(金)21 世紀倶楽部 月例セミナー
講師:第44代 第1航空団司令兼浜松基地司令 熊谷三郎 空将補
演題:「我が国周辺の安全保障環境と航空自衛隊の現状について」
【講演概要】
海に囲まれる日本は人やモノの交流は海や空を介し、領空(領土・領海
の上空)は 他国の航空機が許可なく飛行はできない決まりだ。しかし我が
国の周辺は強大な軍隊・航空機などを持つ極東ロシア軍や北朝鮮、中国など
の国が取り巻いている。
北朝鮮は頻繁に核実験や弾道ミサイル発射を行い、昨今では弾道ミサイル
の距離延伸化を進めている。また日本の防衛システムをかいくぐるハイスピ
ードの技術研究を検証していると聞いている。ロシアについては時々爆撃機
を日本一周飛行させることがあり、この動きは爆撃機の力を誇示するためで
はないかと考えている。また特に中国は活動が活発化し、自衛隊戦闘機がス
クランブル発進領空侵犯の恐れがある侵入機に対する軍用機緊急発進)する
回数がここ10年で20倍近くに増えている。
こうした中、有事はもちろん平時も我が国の空を守る唯一の存在が航空自
衛隊だ。我々の任務は我が国の防衛(国民の生命と財産を守る)が最大目的。
そのための教育・訓練を行うと同時に、全国28か所の地上レーダーサイト
と4か所の防空指令所で24時間365日の警戒監視を実施している。また
対領空侵犯措置や弾道ミサイル防衛、災害派遣、国際平和協力活動など平時
における公共の秩序維持も大切な役目となっている。
「対領空侵犯措置」は、レーダーが領空に近づく航空機を感知すると戦闘
機が緊急発進。パイロットは目視で行動監視をし、近づいた際には「移動せ
よ」とアドバイスする。従わず領空侵犯された場合は「直ちに出ていけ」と
いう警告 へと切り替え「強制着陸」させるが、これまでに強制着陸させた事
実はない。「弾道ミサイル防衛」ではミサイルが探知されると自動警戒管制
システムが日本の領土・領海に着弾しないかを即座に計算。危険と判断する
とイージスBMDシステムによって大気圏外で攻撃する。万が一失敗した場
合はペトリオットPAC-3で攻撃し着弾を防ぐ。
教育訓練については「一般教育」と「技術教育(飛行教育・術科教育)」
がある。パイロットや整備はもちろん、通信、警備、 衛生など多種多様な
専門内容をすべて自衛隊内の学校で学び訓練しているのが特徴といえる。
日米防衛協力については 平素から互いの理解と意思疎通を深め、共同訓練
等を実施している。2015年に見直されたガイドラインには、これまでに
無く同盟強化について深く言及され、外に対して強い抑止力となるメッセー
ジになっている。
また米国だけでなく世界さまざまな国との防衛協力・交流も推進中。航空
幕僚長が各国の空軍司令官とハイレベル交流を積極的に行うほか、部隊間や
実務者交流も進めている。これにより「日本は平和を愛し平和貢献している
国」ということを発信し理解してもらうことが非常に重要だと考えている。