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イベント関連:月例セミナー

日時:2025年5月 8日 15:10 投稿者:pt21c

天竜浜名湖鉄道・今、そしてこれから
講師 天竜浜名湖鉄道株式会社 代表取締役社長 松井宜正 氏

【講演概要】
 天竜浜名湖鉄道は、掛川駅から湖西市の新所原駅まで、6つの市町を結ぶ第三セクター鉄道。旧国鉄の二俣線として1940年に全線開通し、今年85周年。当初は戦争で東海道線が攻撃された場合の迂回路という軍事目的を併せもって作られた。戦後も材木などを輸送していたがモータリゼーションによって需要が減り、国鉄は1984年に廃止を決断。そこで、県と沿線の6つの市町が主な株主となり天竜浜名湖鉄道株式会社が誕生。1987年に開業し、今年38年目。
 天浜線の今。その1「魅せる」。2009年に一般向けの転車台見学ツアーを開始。2011年に駅などの施設31件が新たに登録有形文化財に指定され、現在、指定施設は36施設。2016年には台湾鉄路管理局の集集線と交流協定を締結。2024年には台北メトロと遠州鉄道との3社で友好協定を結んだ。その2「彩る」。2018年から浜松いわた信用金庫、はままつフラワーパークとの3社で、天浜線沿線に花を植えておもてなしの心を伝える「花のリレー・プロジェクト」を始めた。2021年からはガーデン&プロダクトデザイナーの吉谷桂子さんデザインによる「花のリレー号」も運行。それらが実を結び、2023年には全国花のまちづくりコンクールで大賞(国土交通大臣賞)を受賞。昨年は国交省のアメイジングガーデン浜名湖の登録施設となる。現在、植栽地20ヶ所、アダプト団体138団体、参加者は延べ1万4000名となっている。
 コロナ禍の中で天浜線を支えてくださったもの。まずは地域の企業や住民の皆様のご支援。駅に愛称をつける副駅名ネーミングライツを募集したところ、39駅中14駅で実現。ラッピング列車も、稼働車両14両中11両で実施。そして、アニメ、映画、テレビのモデル地、ロケ地になったことも大きい。「劇場版シン・エヴァンゲリオン」や「ゆるキャン△」のファンの方が聖地巡礼で来てくれる。またAKB48のテレビ番組とのコラボ企画も大きな効果があった。
 天浜線の使命の第1は、安全で安定した運行。通学の時間帯は押し込めの人員が必要なほど混んでおり、地域の足を担っている。使命2は利益の確保。第三セクターといえど可能な限り努力する。使命3は沿線地域の観光振興等への貢献。花のリレー・プロジェクト第2章として、弊社と浜松・浜名湖ツーリズムビューロー、浜松学院大学、浜松いわた信用金庫の産官学金4団体による観光プロジェクト研究会が発足。多彩な旅行企画商品を販売し、誘客している。
 今後の戦略として、世の中が便利で快適な未来社会(Society5.0社会)へ向かう中で、逆に天浜線のレトロ感、アナログ感が強みになるのではないか。そこで、アニメ、映画などを誘致し、コンテンツツーリズムを推進。エヴァンゲリオン30周年のほか、ロケ地となった映画「おいしくて泣くとき」も現在公開中。さらに観光需要にも注力し、着地型旅行商品の造成やインバウンド営業を強化。加えて、新分野事業を構築し、経営の安定化を図っていきたい。
 天浜線は戦前の軍事路線から、戦後は人や物資の輸送を担う生活路線になり、2021年には平和の祭典である東京オリンピックの聖火も輸送して平和路線としての役割も果たした。これからも、地域と人を結ぶ郷土愛に満ちた愛情路線として、地域社会の発展に貢献したい。


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