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イベント関連:月例セミナー

日時:2022年5月 2日 15:32 投稿者:pt21c

講師:第一生命経済研究所 熊野英生 氏
演題:脱炭素化に向けて、世界が動き出す
   ~日本の展望を考える~
【講演概要】
 ロシアのウクライナ侵攻で我が国が最も影響を受けているのは原油価格の高騰だろう。
欧州連合のロシア制裁が進む中、日本はロシアから天然ガスを購入するサハリン計画が
進んでいたこともあり、今後の対応を深く考えなくてはならない。さらにCo2排出に対
し課税する「炭素国境税」によってロシアを困窮させたい欧米の意図もあり、カーボン
プライシング(二酸化炭素排出量に応じて企業や家庭が金銭的なコスト負担をする仕組み)
が急速に進むことが予想される。課税メカニズムが日本の産業に大きく影響してくる可
能性があることを理解してほしい。
 我が国のCo2削減には発電と工場対策が重要になる。原発は3・11以降日本でほとん
ど稼働していないが、エネルギーコストを下げるためには有効。しかし国民の原発稼働
に対する反発もあり原発話題はタブー視されたままの状態が続いている。このまま何も
議論しないのは不健全。しっかり議論したほうがいいだろう。
 そして今後カーボンプライシングの税収は再生エネルギー事業に回されていくことが
予想され新たなビジネスチャンスになる。再生エネルギーは需要と供給のバランスコン
トロールが難しいため、LNG(液化天然ガス)へのシフトも考えられる。この分野は日本
の製造業で研究が進んでいるので今後有望なのではないだろうか。
 もうひとつ極めて重要なのが自動車など輸送手段の電動化だ。炭素国境税が促進され
れば新たな次世代エコカー補助金など政府が関与しながらさまざまな制度設計が加速し
ていくだろう。
 こうした中、ビジネスチャンスとして注目されるのがCo2を吸収させる技術。大気中
のCo2を化学物質で吸着させるDAC法や、石油・天然ガスから水素やアンモニアを取り出
すときに発生する高濃度Co2を吸着させるCCS法などの研究が進んでいる。さらに農業を
通した究極のエコ事業を実現できる可能性もある。不耕起農業を進めることで大地にCo2
を吸収させる研究も始まっている。
 このように2030年までに起こるとみられる経済転換はビジネスチャンスの機会ではあ
るが、これまで収益を得ていた旧来産業がうまく転換できるかが大きな課題になる。環
境、社会、企業統治に悪影響のある企業に投資を控える「Esg投資」が進めば負の遺産を
増やしてしまうことも考えられる。
 現在のロシア制裁が我が国の産業に大きなインパクトを与え、今後の経済転換によって
新たな南北格差が生じてくることも十分理解し、これからの産業活動に取り組んでいただ
きたい。


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