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日時:2017年3月 1日 12:11 投稿者:pt21c

演題:劇団たんぽぽ 創立70周年に思うこと

講師:上保節子氏 劇団たんぽぽ代表

【講演概要】

劇団たんぽぽの創設者は、浜松市滝沢生まれの小百合葉子という一人の女性。

小説家・坪内逍遥に師事し、児童文学の研究から女優の道へ。

戦後、帰る場所を失った子供たちに「夢と希望を」と劇団を立ち上げた。

常に「すべての子供たちに等しく」を演劇理念の一つとし、

日本返還前の沖縄公演を政府の助け無しに実現させる、

男気のあるカッコいい女性だった。

私は大井川上流のお茶農家に生まれ、牛や豚を飼い、

米も作る自給自足に近い暮らしの中、6人兄弟の末っ子として育った。

50年前に20歳で入団し「土臭いぞ」と言われることは嫌だったが、

実際の芝居では育った環境の様々な経験が役に立ち、大変感謝している。

演劇には何より多くの経験が宝になる。

劇団たんぽぽが上演してきた作品は、当初は子供たちに夢と希望を届ける

楽しい作品が主であった。しかし時代と共に「今の子供たちと一緒に何を語ろうか」

という視点で考えるように変化していった。長年舞台に立って感じることは、

子供たちは演劇を観て、その世界を疑似体験したり、

作品を通してそれぞれに感じ取ったりしていく。

だから自然体の芝居を子供たちに届けるだけでいいと実感している。

今の社会では、大切にしなければならない心や命について考えることが

少なくなってしまい、「いのちのまつり」「100万回生きたねこ」など、

命について考える芝居の公演依頼も多い。また近く上演を予定している

「ゆずり葉の季節(はる)」は、日本在宅医学会に委託され、

在宅介護をテーマにした演劇。ゆずり葉は、枝先に若葉が出たあと、

前年の葉がそれに譲るように落葉する。人間も同じように、

子供たちに大切なことを伝え育て、譲っていくことが大人たちの役目だと思う。

私たちの仕事は終わりが無い。

子供たちに「今、あなたは何を考える?一緒に考えてみない?」と問いかける

70年続けてきたスタンスをこれからも続けていきたい。

そして長年多くの方々にお世話になりここまでこられたことを感謝し、

私たちができることは真摯な気持ちで子供たちに向かい合い、

心の交流をしていくことだと、今回お話することで改めて感じることができた。


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