講師:総本山泉涌寺執事・真言宗泉涌寺派教学部長渡邊恭章氏
演題:「仏教の話し方教室~口は災いの元~」
【講演概要】
話す以上に必要なことが聞く事だ。老若男女さまざまな人の話を聞き、
自分のボキャブラリーを増やさなければ、言いたいことが相手に伝わらない。
それと同時に日頃から修養・鍛錬を心掛け、人間性を高めておかなくては、
誰も耳を傾けてはくれない。多くの人の話を聞けば聞くほど学ぶことが
たくさんあるのである。
話す内容は日頃からテーマを用意しておくと良い。話す人の経験に基づいた
内容が一番面白いので、家での出来事、通勤時間や会社での出来事など、
ネタをチェックしておくクセをつけておくことも大事。5分のネタを
いくつか用意しておけば、繋いで30分を話すことも可能だ。
話すことは人生を拡げ幸せを増やす。しかし同時に災いの元になることが
あると心しておかなくてはならない。特に会話でのNGワードは、差別や悪口、
愚痴や相手を不快にさせる言葉などである。また押し付けの言葉も我々宗教界でも
特に気を付けている。さらに最近では横文字の専門用語が会話に多用されるが、
寺ではそれらを全部日本語に直して理解するように指導している。
そうすれば幼稚園児にも解りやすく説明することができる。
「良い話だった」と最終的に印象付けるには、互いが安心できるところに
着地することが大事。マイナスがプラスに変化したり、プラスな話題が
さらに大きなプラスになったり、建設的な話で終わるとお互いが満足することができる。
「口は災いの元」「三寸の舌に五尺の身を滅ぼす」など口に関することわざは実に多く、
人を幸せにするのも不幸にするのも口である。弱点に触れたり、
おせっかいな発言をしたり、口が軽いことで失敗をしてしまったときには、
素直に「ごめんなさい」が一番だ。
仏教の戒律「十善戒」には、口の罪が体や心の罪よりも多く定められている。
嘘をつかない「不妄語(ふもうご)」、中身の無い言葉を話さない「不綺語(ふきご)」、
乱暴な言葉を使わない「不悪口(ふあっく)」、他人を仲違いさせるようなことを
言わない「不両舌(ふりょうぜつ)」などである。こうした口の持つマイナス要素を
理解し、話す相手は何を望んでいるかに気を配り、心地よい言葉で話すことを
習得すれば、仕事も家庭も社会も平和になる。平和の輪があれば、自分が
困ったときに助けてくれる繋がりになるだろう。
皆さんはよく「頑張って」を使うが、京都では「人のために気を張り巡らせ、
人に良い気持ちになってもらうために過ごして」という言葉をよく使う。
皆さんにも最後にお伝えしたい。どうぞ「おきばりやす」。
2019年3月19日(火)21 世紀倶楽部月例セミナー
講師:トップリーグヤマハ発動機ジュビロ前監督 清宮克幸氏
演題:「勝つためのチームマネジメント」
【講演概要】 私が監督時代に大切にしていた言葉は「使命感(ノブレス・オブリージュ)」
と「独自性」。そ のエピソードをお話する。 2003年イラクで日本人外交官が何者かに
射殺され殉職した。その外交官は私が兄貴と慕って いた奥克彦先輩だ。私の九歳年上だが、
早稲田のラグビー部に所属していたことがあり、私が 2001年早大ラグビー部の監督に
なった際に意気投合し、さまざまなことをレクチャーしてくれ た人である。
当時奥先輩が赴任するイラクはテロが多く危険視されていた。しかし先輩は
「外 交官として生き、イラクとイラクの子供たちのためそして何より日本の
ためになる今の仕事を 置いてどうして帰れようか。まだハーフタイムだ。
ノーサイドの笛が鳴るまでここで頑張り続 ける」と知人にメッセージを
送っていた。弔いの場でそれを知った私たちは「まさにノブレス・ オブリージュだ」
と実感。奥先輩の言葉は私にとって大切な言葉となった。そして哀しみで停
滞していた我々のエネルギーを前進させ、奥先輩の遺志を継ぎイラクの子供たちへの
教育支援 基金を立ち上げることに繋がった。さらにその後のスポーツ普及を
目的とした「ワセダクラブ」 もトップチームが果たすべき責務との想いで立ち上げた。
また、使命感を持つ選手を育て上げるために私が用いた手法が「独自性」だ。
最初は我流で 良い。人がやらないことをやり続けると、それがいずれ本流になる。
それを経験し、やり遂げ たときに芽生える絆、責任感を持った者が多ければ
多いほどチームは強くなると考えている。 ヤマハ発動機ジュビロは2009年の
リストラ後は非常に厳しい状態だった。しかしそんな中で もトップリーグで
今までにないエネルギーに満ちた試合を繰り広げた選手の姿を見て、
私は「ジ ュビロしかやらないラグビーを創り上げる」と宣言した。
レスリングを本気で学び、科学的に スクラムを研究しているフランスに渡り、
ジュビロオリジナルの形を創り上げ、日本一を達成 することができた。
特に感動したのは、ジュビロのスクラムが日本代表チームで採用される
ことになったのだ。まさに自分たちの独自性を活かしてやっていたものが
スタンダードになった 瞬間だ。これぞ独自性が組織にもたらしたパワーだと言える。
現在、私にとっての「ノブレス・オブリージュ」は、総合型スポーツクラブ
「一般社団法人 アザレア・スポーツクラブ」で地域に貢献することだ。
女性と子供を二本柱にしているが、将 来的には地域の高齢者たちも視野に
入れていきたい。そして今後さまざまなスポーツを組織化 し、
それによって地域が恩恵を受けて楽しく豊かな人生になればと考えている。
ともあれまずは2020年ワールドカップのポスター貼付を!日本代表が
キャンプを張る貴重な 地域として街も賑わうはず。乞うご期待。