南海トラフ巨大地震と富士山噴火を考える講師 日本地震予知学会 会長 長尾年恭 氏
【講演概要】 2024年1月1日の能登半島地震は、明治以降に日本で起きた内陸の地震では最大だった。今後はこの地震で割れ残った能登半島東側の佐渡ヶ島付近や、日本海東縁部の地震空白域である秋田沖で地震が起きるかもしれない。一方、太平洋側では、東日本大震災の最大余震がまだ発生していない可能性がある。青森県沖、房総半島沖に歪が蓄積しており、ここで津波を伴う大地震が将来発生すると地震学者は考えている。また北海道沖についても破局的な地震が400~500年おきに起こることが、東日本大震災後にわかった。7月にはカムチャッカ半島沖で巨大地震が起きたし、数年以内にM8クラスのものが起きるかもしれない。さらに、もう一つ危惧される場所が福岡。2005年に福岡県西方沖地震を起こした警固(けご)断層が、博多駅辺りから内陸側の市街地で割れ残っている。大都市の直下ではこれが一番危ない。 そして南海トラフ巨大地震。昨年8月8日、史上初の南海トラフ臨時情報が発表された。日本書紀に684年の最初の記録があり、以後12回発生。記録を見ると大地震の40年ほど前から内陸で地震活動が盛んになっている。次の南海トラフ地震は、その最初の地震活動が1995年の阪神淡路大震災ではないかと考えられる。現在、仮説として2035年説、2038年説が公表されている。だが、古文書の記録のない7000年前から調べてみると、過去に4回、M9クラスの超巨大地震が起きていることがわかった。これをスーパーサイクル地震と呼ぶ。次はこれかもしれない。「南海トラフ巨大地震は来ますか?」と聞くのは「人は死にますか?」と聞くのと同じ。将来確実に発生する。そして津波、建物倒壊、火災が全て起きる。被害者も救助者も一緒。今のIT化された近代都市が初めて被災するので、どうなるかわからない。国の衰退、政府の財政破綻につながる。国難を回避するために産官学の総力結集が必要だ。 富士山は人間で言えば20歳くらいの若い活火山。実は東日本大震災の後に、噴火の危機があった。近い将来100%噴火する。噴火による火山灰は停電をもたらす。電気がなくなると何もできない。これが最も新しい都市型災害だ。また火山灰は航空機にも大きく影響する。 最も重要なことは耐震補強。家が壊れないと火事が起きない、命が助かる、被災後の暮らしに困らない。2000年の耐震基準を満たした日本家屋は、津波以外ではほとんど壊れない。 関東大震災から100年以上だが、関東大震災と安政の大地震の出火場所がほぼ同じ。実は、地下に東関東ガス田という巨大なメタンガスの貯留槽が広く分布している。 東海大学のベンチャーとして、「地下を『視る、診る、看る』」研究者をサポートするDuMA(地下気象研究所)を2011年に設立。毎週「地下天気図」というものを発行している。 電離層電子密度の異常という大地震の前兆現象が、GPS観測網の配備後に世界中で起きたM8以上のすべての地震で観測された。40分前くらいから起きるが、異常と判断し情報として出せるのは10~20分前くらい。これをなんとかしたい。このようなことや地下天気図、南関東ガス田のことなどを『巨大地震列島』という本に書いているので、こちらもお読みいただきたい。
2025年8月27日(水)21世紀倶楽部月例セミナー
南海トラフ巨大地震と富士山噴火を考える
講師 日本地震予知学会 会長 長尾年恭 氏
【講演概要】
2024年1月1日の能登半島地震は、明治以降に日本で起きた内陸の地震では最大だった。今後はこの地震で割れ残った能登半島東側の佐渡ヶ島付近や、日本海東縁部の地震空白域である秋田沖で地震が起きるかもしれない。一方、太平洋側では、東日本大震災の最大余震がまだ発生していない可能性がある。青森県沖、房総半島沖に歪が蓄積しており、ここで津波を伴う大地震が将来発生すると地震学者は考えている。また北海道沖についても破局的な地震が400~500年おきに起こることが、東日本大震災後にわかった。7月にはカムチャッカ半島沖で巨大地震が起きたし、数年以内にM8クラスのものが起きるかもしれない。さらに、もう一つ危惧される場所が福岡。2005年に福岡県西方沖地震を起こした警固(けご)断層が、博多駅辺りから内陸側の市街地で割れ残っている。大都市の直下ではこれが一番危ない。
そして南海トラフ巨大地震。昨年8月8日、史上初の南海トラフ臨時情報が発表された。日本書紀に684年の最初の記録があり、以後12回発生。記録を見ると大地震の40年ほど前から内陸で地震活動が盛んになっている。次の南海トラフ地震は、その最初の地震活動が1995年の阪神淡路大震災ではないかと考えられる。現在、仮説として2035年説、2038年説が公表されている。だが、古文書の記録のない7000年前から調べてみると、過去に4回、M9クラスの超巨大地震が起きていることがわかった。これをスーパーサイクル地震と呼ぶ。次はこれかもしれない。「南海トラフ巨大地震は来ますか?」と聞くのは「人は死にますか?」と聞くのと同じ。将来確実に発生する。そして津波、建物倒壊、火災が全て起きる。被害者も救助者も一緒。今のIT化された近代都市が初めて被災するので、どうなるかわからない。国の衰退、政府の財政破綻につながる。国難を回避するために産官学の総力結集が必要だ。
富士山は人間で言えば20歳くらいの若い活火山。実は東日本大震災の後に、噴火の危機があった。近い将来100%噴火する。噴火による火山灰は停電をもたらす。電気がなくなると何もできない。これが最も新しい都市型災害だ。また火山灰は航空機にも大きく影響する。
最も重要なことは耐震補強。家が壊れないと火事が起きない、命が助かる、被災後の暮らしに困らない。2000年の耐震基準を満たした日本家屋は、津波以外ではほとんど壊れない。
関東大震災から100年以上だが、関東大震災と安政の大地震の出火場所がほぼ同じ。実は、地下に東関東ガス田という巨大なメタンガスの貯留槽が広く分布している。
東海大学のベンチャーとして、「地下を『視る、診る、看る』」研究者をサポートするDuMA(地下気象研究所)を2011年に設立。毎週「地下天気図」というものを発行している。
電離層電子密度の異常という大地震の前兆現象が、GPS観測網の配備後に世界中で起きたM8以上のすべての地震で観測された。40分前くらいから起きるが、異常と判断し情報として出せるのは10~20分前くらい。これをなんとかしたい。このようなことや地下天気図、南関東ガス田のことなどを『巨大地震列島』という本に書いているので、こちらもお読みいただきたい。