2016年1月28日(木)21世紀倶楽部月例セミナー 演題 最近の金融経済情勢 ~2016年の展望~ 講師 小髙新吾 氏 (日本銀行静岡支店長 )
【講演概要】 日本の実質GDP(実質国内総生産)は、漸くリーマンショック以前の水準に戻ってきたほか、実質GDPに交易利得や海外からの所得純受取なども加えた「実質GNI(実質国民総所得)」で見ると、所得環境は少しずつ改善してきていることがわかる。しかし、新年早々市場を混乱させた要因ともいえる中国経済や、新興国への不安など、世界経済の変化が今後日本にどのような影響を与えるか、注目すべきところだ。 静岡県に目を転じると、リーマンショックと震災の影響後、全国平均と比べて景気回復が遅れをとっている。リーマンショック以降の当県の構造変化を見ると、製造業から賃金水準の低い非製造業へ、また非正規雇用のウエイトの高い産業へとシフトしている。こうして雇用者所得が伸び悩んだことが、個人消費の低迷に繋がっている。とはいうものの、企業や業界などの景況感を数値化した日銀短観の12月の「業況判断 D.I.」では、旅館・ホテルなどが、富士山静岡空港を利用したインバウンド効果もあり、記録的に高い数値を記録した。製造業の企業収益や経常利益を見ても、ひところの数値に比べると、随分改善してきたといえる。 では今後、県内経済の再構築という課題対策について私的見解を述べる。現在は大企業を誘致すれば地域発展に結びつくという考え方は難しい。静岡県は防災先進県として知られ、子育て世代への取り組みも活発で、教育環境も充実している。こうした特長を活かすことが大切だ。またロボット、光、医薬品、食品などさまざまな分野における技術者の育成もポイントになるだろう。 さらに、マーケティングや販路確保に注力し、既存のものづくり産業と合わせ、サービス業を進化させていく必要がある。こうして産業の生産性を上げ、賃金アップを目指し、魅力的な町として若い世代を増やすことができれば、進化する前向きな循環体制を構築できるだろう。 今年は、2月に新東名の新拠点開通、4月にNHKで「とと姉ちゃん」放送開始、11月「世界音楽の祭典」開催、来年には大河ドラマ「おんな城主直虎」放送開始と、盛りだくさんの話題が予定されている。この機をチャンスに、「潜在力を顕在化させた浜松」と言われる2016年とするためにも「産・官・学・金」の力を合わせていきたい。
2016年1月28日(木)セミナーレポート
2016年1月28日(木)21世紀倶楽部月例セミナー
演題 最近の金融経済情勢 ~2016年の展望~
講師 小髙新吾 氏 (日本銀行静岡支店長 )
【講演概要】
日本の実質GDP(実質国内総生産)は、漸くリーマンショック以前の水準に戻ってきたほか、実質GDPに交易利得や海外からの所得純受取なども加えた「実質GNI(実質国民総所得)」で見ると、所得環境は少しずつ改善してきていることがわかる。しかし、新年早々市場を混乱させた要因ともいえる中国経済や、新興国への不安など、世界経済の変化が今後日本にどのような影響を与えるか、注目すべきところだ。
静岡県に目を転じると、リーマンショックと震災の影響後、全国平均と比べて景気回復が遅れをとっている。リーマンショック以降の当県の構造変化を見ると、製造業から賃金水準の低い非製造業へ、また非正規雇用のウエイトの高い産業へとシフトしている。こうして雇用者所得が伸び悩んだことが、個人消費の低迷に繋がっている。とはいうものの、企業や業界などの景況感を数値化した日銀短観の12月の「業況判断 D.I.」では、旅館・ホテルなどが、富士山静岡空港を利用したインバウンド効果もあり、記録的に高い数値を記録した。製造業の企業収益や経常利益を見ても、ひところの数値に比べると、随分改善してきたといえる。
では今後、県内経済の再構築という課題対策について私的見解を述べる。現在は大企業を誘致すれば地域発展に結びつくという考え方は難しい。静岡県は防災先進県として知られ、子育て世代への取り組みも活発で、教育環境も充実している。こうした特長を活かすことが大切だ。またロボット、光、医薬品、食品などさまざまな分野における技術者の育成もポイントになるだろう。
さらに、マーケティングや販路確保に注力し、既存のものづくり産業と合わせ、サービス業を進化させていく必要がある。こうして産業の生産性を上げ、賃金アップを目指し、魅力的な町として若い世代を増やすことができれば、進化する前向きな循環体制を構築できるだろう。
今年は、2月に新東名の新拠点開通、4月にNHKで「とと姉ちゃん」放送開始、11月「世界音楽の祭典」開催、来年には大河ドラマ「おんな城主直虎」放送開始と、盛りだくさんの話題が予定されている。この機をチャンスに、「潜在力を顕在化させた浜松」と言われる2016年とするためにも「産・官・学・金」の力を合わせていきたい。