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日時:2016年3月23日 16:18 投稿者:pt21c

2015年10月21日(水)21世紀倶楽部月例セミナー

演題   戦国武将に学ぶ失敗学

講師   伊東潤 氏  (作家・歴史研究家 )


【講演概要】
私は12歳のときドラマで観た「新・平家物語」に感動し、原作者である吉川英治の本から読み始めた。15歳のとき司馬遼太郎の『竜馬がゆく』に熱中し、以来10年毎に読み返してきた。社会人になってからは、リアリズムを徹底的に追究する吉村昭の本を熟読。自らの作品は、司馬先生と吉村先生をハイブリッドしたような作風が特長の本格歴史小説だと思う。
【歴史から学ぶ7つの教訓】を紹介する。①己を知り強みを生かす ②勝負どころを見極める(与えられるチャンスは無限ではない)③自責で考える ④時間を大切にする
⑤思考停止しない(固定観念を取り払い、発想を転換する) ⑥マクロな視点を持つ(高所に立つと、何事も冷静に考えられる) ⑦エネルギーを自ら作る(怒りや嫉妬でもモチベーションになる)。
私は長年身を置いたIT業界から小説家へ転換し、2007年に『武田家滅亡』でデビューした。本業を転換する勝負所を見極め、自己分析して自分にしかない強みを生かしたことで、作家として波に乗ることができた。歴史から学んだ教訓を私自身が実感している。
織田信長は、相次ぐ成功から自信過剰となり、自己を肥大化させ、反省することなくそれが油断に繋がった。明智光秀は予想外の出世にプレッシャーを感じ、疑心暗鬼のノイローゼとなり逃避願望から本能寺の変を起こしたと推察する。豊臣秀吉は自己顕示欲が強く、相次ぐ成功から誇大妄想となり、最晩年には茶の湯や能に没頭するなど、芸術分野へ逃避してしまった。これら三者の失敗とは異なり、徳川家康が成功できたのはなぜか。彼は忍耐力があり、己が凡庸であることを悟っていたからこそ慎重さがあり、周囲の意見にも耳を傾けた。自らの成功に踊らされることなく、失敗を自責で振り返った謙虚人だった。
私は現実社会でも、人間のタイプは①決断に富んだ行動派(織田信長)②クールな現実主義者(明智光秀)③奔放な発想の自由人(豊臣秀吉)④粘り強い堪忍の人(徳川家康)の4タイプに分けられると分析し、著書『天下人の失敗学』に紹介した。この他『国を蹴った男』『巨鯨の海』『天地雷動』など文学賞受賞作品や、最新作『鯨分限』も是非お読み頂きたい。


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