テレビでは語り尽くせなかったパリ五輪(柔道)を振り返る
講師 バルセロナ五輪銀メダリスト
溝口紀子氏
【トークショー概要】
1971年生まれ。磐田市(旧磐田郡福田町)出身。浜松西高、埼玉大学卒業。埼玉大学大学院(修士)、東京大学大学院(博士)修了。1992年バルセロナ五輪女子柔道52kg級で銀メダル。1996年アトランタ五輪56kg級準々決勝で惜敗、同年現役引退。2004年アテネ五輪フランス柔道代表チームのコーチ。2018年から日本女子体育大学教授、袋井市スポーツ協会会長。
福田町は柔道が盛んで、10歳の時「やせるよ」と言われて気軽に始めた。1週間目に「投げられてみろ」と言われて、投げられたら鎖骨骨折。根性を試された。そこでやめずに切磋琢磨。骨は1週間で治った。高1の時、史上最年少で世界一に。高2の時は全日本52kg級で十連覇中だった山口香さんを破って優勝。1992年バルセロナ五輪の銀メダルは、有森裕子さんがメダルを取ったのと同じ日だった。実はこの8月1日は1928年アムステルダム五輪800mで人見絹江さんが女性で初めて銀メダルを取った日だと、磯田道史氏に教えられた。女性の活躍の歴史を紡いでいるのかな、と思う。バルセロナの決勝の相手は地元の選手で自信はあったが、カルロス国王夫妻が来て会場がスペイン応援一色になってしまった。悔しい思い出しかない。
今年のパリ五輪ではルールが変わり、強い選手でも試合に出ないとランキングが下がる。斉藤立選手はケガをして9位まで下がっていた。一方、フランスのリネール選手は減量し、試合に出てランキングを上げていた。試合前のこのような駆け引きが重要。柔道混合団体の代表決定戦の階級は、ルーレットでの抽選でリネールが出る階級となり「ズルーレット」と言われたが、私も全日本の監督も、若い斉藤がこのひのき舞台で勝つと思った。これが勝負だ。
柔道のルールはどんどん変わり、常にアップデートが必要。「有効」も復活する。しかし、他のスポーツのようなビデオ解析はない。もっと面白く観られるようなルール改編は必要。
浜松市出身の橋本壮市選手の応援では地元が盛り上がった。今、日本の柔道の登録者数は12万人だがフランスは60万。人口は日本の半分だが。私のメダルから32年。西高にはオリンピアンの碑がある。古橋廣之進さん、私の次が空けてある。そういう夢も持っている。
オリンピック、4年後は三度目の正直があるのか?毎週試合をやってランキングを上げるというシステムの中で、どう4年に1度の1日にピークを合わせるか。今まで以上に厳しい。塚田真希さんが女性で初めて柔道女子日本代表監督に就任した。情報戦を監督、選手がコントロールし、「お家芸」というプライドを捨て、むしろこちらから柔道途上国にも行くべき。
スポーツビジネスがパリオリンピックを境に広がっている。フランスではリネールがプロフェッショナル集団と共に、スポーツメディア関係者にビジネスノウハウを伝えている。
銀メダルのこと。銅メダルは「金に同じ」で、最後まであきらめずに取ったメダルだが、銀メダルは唯一、負けてもらうメダル。「金に良し」と書きたいが何か足りない。磨かないとすぐに黒くなってしまうから、何が足りないかを磨くたびに思い、成長できる。ほんとにメダルって重いと感じる。浜松から静岡から、次に金メダリストが出てほしい。楽しみにしている。
21世紀倶楽部2025年1月例会&2月例会のお知らせ
2025年1月の例会は、
日本銀行静岡支店支店長の蒲地久司氏を
講師にお迎えし、
「最近の金融経済の動向」というテーマで、
静岡県経済の現状と動向などについて
語っていただきます。
日時は、1月27日(月)午後6時から
会場は浜松プレスタワー17階静岡新聞ホールです。
2月の例会は、
共同通信社編集委員の太田昌克氏を講師にお迎えし、
「トランプ2.0時代の日本と世界」というテーマで、
第2次トランプ政権が世界や日本の政治、経済に与える影響を中心に
ご講演いただく予定です。
日時は、2月18日(火)午後6時から
会場は浜松プレスタワー17階静岡新聞ホールです。