日時:2023年2月 1日 14:36 投稿者:pt21c

静岡県経済の現状と課題
講師 日本銀行静岡支店長 小泉 達哉 氏
【講演概要】
 静岡県は日本経済の縮図と言われ、景気動向もおおむね全国と同じ
ような動きをするが、昨年全国が上向きになった流れに乖離し静岡県
が落ち込んだ理由は、製造業が半導体調達に苦しみ計画通りに生産が
できなかった影響と、食料品業界等に代表される内需型産業が大幅な
コストアップにより景況感を悪化させたことが足かせになったと思わ
れる。
 しかしその後、半導体の供給不足緩和に伴い、輸送用機械の業況
は徐々に回復を見せ、非製造業においてはウィズコロナで経済活動を
動かそうという流れから大幅に改善している。
 全国の企業物価指数を見ると、大幅な為替円安の影響もあり,高止
まりの状況が続いている。円の実質実効為替レートは、バブル崩壊間
もない時期をピークに、以来現在までずっと円安が続いている。特に
今回円安が社会問題化した理由は、輸出を伸ばせずインバウンドの受
入れもできなかったこと。また、あらゆる原材料の価格上昇の影響や、
ウクライナ情勢や天候変動の要因などかく乱した事象が日常化したこ
とも大きかったといえる。
 県内企業の近況は、規模や業種に関わらず仕入れ価格の上昇を販
売価格に十分転嫁できていない状況が見てとれる。特に最近の大幅な
エネルギー価格の上昇の販売価格への転嫁が大きな問題になっている
。今後、労働時間や就労者数の減少が見込まれる中で、経済成長を実
現するには、TFP(技術革新や労働能力の向上、経営効率改善などによ
る付加価値創造力)をいかに上げるかが問題。
 では何をすればよいのか。ひとつの考え方として、今後は直接的
にも間接的にも人口増加と経済成長を続ける世界(特に東南アジアや
アフリカなどの人口増加エリア)に絡んでいくことがブレイク・スル
ーになり得る。
 静岡県は一人当たりの県民所得全国第3位、中でも企業所得の割合
が大きいことが特徴。だからこそプレゼンスの大きい企業がどのよう
に研究開発や人材育成等に再投資するかが県経済を大きく左右する。
また県民一人当たりで見た家計の財産所得も全国第3位であることか
ら、地元のストックをどう活かすか、また、その利益を起業支援や人
材育成にどう投資するかも大事な要素。
 さらに静岡県は、東部・中部・西部がそれぞれ同レベルの人口と経
済規模を持っていることも強味。県外への人口流出を最小限に押し止
め、技術やノウハウをいたずらに流出させないために、県内企業同士
がそれぞれの強みを見つけ連携することが、大きな力になると感じて
いる。
 平成25年の内閣府・財務省・日本銀行がデフレ脱却と持続的な経済
成長の実現のために出した共同声明にある通り、「金融緩和」と共に
日本経済の「成長戦略」と持続可能な「財政構造」の構築が相まって
筋肉質な日本経済を作る源泉になると考える。


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