日時:2024年8月27日 16:06 投稿者:pt21c

「南海トラフ地震臨時情報」初の発表で見えてきたこと
講師 TBSテレビ報道局 解説委員 福島 隆史 氏

【講演概要】
8月8日当日をふり返る。「南海トラフ地震臨時情報」の想定される発
表の流れは、日向灘の地震のような現象の発生から5~30分以内に気象
庁が巨大地震に結びつくかどうかの調査を始めたという「調査中」の
臨時情報を発表。その後地震研究者6人による評価検討会が緊急招集さ
れ、評価をまとめる。早ければ2時間以内に評価結果が出る。我々JN
N系列の放送局は、調査中と評価結果が出るタイミングで特別番組を
組むと決めて対応を準備しており、4月20日には訓練も実施していた。
8月8日は訓練の想定とほぼ同じとなり、その成果があった。
南海トラフ地震関連の情報体系は2017年秋にもとになる仕組みがで
き、2019年5月に臨時情報と解説情報の2つを出すことが決まったが、
今回初めて出された。それ以前の動きについては静岡新聞社刊の『沈
黙の駿河湾』に詳しく書かれているので、興味ある方はご一読を。
臨時情報のキーワードは「調査中」「巨大地震警戒」「巨大地震注意」
「調査終了」の4つ。発表基準は震度や津波の有無ではなく、地震が
南海トラフ地震の想定震源域で起き、地震の規模がマグニチュード
(以下M)6.8以上である、という2つの条件のみ。モーメントマグニチ
ュード(以下Mw)という基準で地震の規模を計算した結果7.0以上と評
価したため、今回「巨大地震注意」が発表された。東京大学の災害情
報研究者の緊急アンケートによると、4人中3人が何らかの地震が起こ
ると受けとめ、これが地震予知情報と思われた可能性がある。残念な
がら地震予知は確立されていない。臨時情報は、最初の地震から1週間
以内に、南海トラフ地震の想定震源域で、最初の地震よりは巨大な地
震が起きる確率が少し上がっていることを示す情報。"1週間以内"に科
学的根拠はなく、社会が受け入れられる期間としての1週間である。
「巨大地震警戒」が出るのは、先に起きた地震がMw8以上と評価され
た場合。地震発生後の避難では間に合わない沿岸部などの住民は、こ
の時点で避難が呼びかけられる。高齢者等事前避難対象地域もあり、
シビアな状況。南海トラフ地震評価検討会の平田直会長は「次の巨大
地震がどこでいつ起きるかは言えない。想定震源域全体で注意してほ
しい」と語る。
臨時情報が出るもう一つのパターンは「通常と異なるゆっくりすべ
りが発生した可能性」。これは地下の「ひずみ計」がキャッチし、地
上では揺れを感じない。そんな時どうするか。国が出すメッセージは
「巨大地震注意」か「巨大地震警戒」か「調査終了」のみ。このゴー
ルに着目して、日頃から備えをすることだ。それぞれが出た場合にど
う対応をするか、今の段階で決めることができる。その際に顧客や社
員に対してもメッセージを出すことは有効である。
13年前のM9.0の東日本大震災。その2日前に同じ震源域でM7.3の地震
が起きていたが、このあと巨大地震が起きるかもしれないという警告
は当時なかった。国としてはこの事実を見た以上、南海トラフエリア
でM7の地震が起きて何も注意喚起をしないという選択肢はない。注意
呼びかけの妥当性にはいろいろな議論があると思うが、確率が低いか
ら何もしなくていいというのは違う。臨時情報の受けとめをこの機会
に考えていただけたらと思う。

日時:2024年8月27日 15:49 投稿者:pt21c

9月の例会の講師は、
静岡県立大学経営情報学部の六井淳学部長です。
講演のテーマは「AI(人工知能)の現状と共存への道」です。

日時は、9月24日(火)午後6時から
会場は浜松プレスタワー17階静岡新聞ホールです。

10月の例会の講師は、
静岡県感染症管理センター長で医師の後藤幹生氏です。
講演のテーマは
「新型コロナ対応を踏まえた静岡県のこれからの感染症対策」です。

日時は、10月25日(金)午後6時から
会場は浜松プレスタワー17階静岡新聞ホールです。

日時:2024年8月 8日 16:08 投稿者:pt21c

光技術による社会貢献と高付加価値化への挑戦
講師 浜松ホトニクス株式会社 代表取締役社長 社長執行役員 丸野 正 氏
【講演概要】
 当社は1953年創業、従業員約6,000人。2023年9月期で売上2,214億円。
研究開発費に120億円を使っている。私たちの心には常に高柳健次郎先生
がいる。「女神の前髪を掴め」という言葉。常に先回りをし、女神の前に
出て前髪を掴む。人のまねではなく自分独自のことをやる。先生の弟子
の堀内平八郎が創業した当社に流れるマインドは、「自主性を重んじる」
こと。「できないと言わずにやってみろ」という風土でチャレンジできる
環境が整っている。
 まず、スーパーカミオカンデ。岐阜県飛騨市神岡鉱山の地下1,000m。直
径39.3m、高さ41.4m、5万トンの純水を蓄えたタンクの壁一面に11,000本
の光センサ光電子増倍管を設置。ここで宇宙から飛んでくる素粒子の一つ、
ニュートリノを観測する。2002年に小柴昌俊先生が超新星爆発に伴ったニ
ュートリノの観測に成功してノーベル物理学賞を受賞。2015年にニュート
リノに振動があることが発見され、梶田隆章先生がノーベル物理学賞を受
賞。現在は直径68mのハイパーカミオカンデに40,000個相当の検出器を設
置し、2027年からの観測開始を目標としている。またここでノーベル物理
学賞を受賞される方が出てほしいと切に願っている。
 次に、1983年に始めたPET、Positron Emission Tomography(陽電子放
出断層撮影法)。正常細胞ががん化すると糖を代謝。そこにブドウ糖18F-
FDGを注射するとがんの病巣に集まり放射線を放出。それを検出し、がん
を早期発見する。この事実は当社で検証し学会で発表した。PET研究の発
端は、人はなぜ戦争をするのか脳機能を解明して世界平和を実現しよう!
という当時の社長の発案。1988年には世界の脳科学者を集めて浜松で脳・
精神科学平和探究国際会議を開催。この会議は現在も続く。2002年には
PET検診は保険適用となり、浜北の中央研究所の中に浜松PET診断センター
を設立。2019年からはアルツハイマー型認知症の原因となる脳内のアミロ
イドPET検査も開始。PET検診は多くの企業で取り入れられている。「歳を取
っても健康で元気に暮らせる社会の実現」が研究のゴール。SDGsの3「すべ
ての人に健康と福祉を」に貢献。
 もう一つはレーザ核融合発電。核融合の原理は、海水中に無尽蔵にある重
水素、三重水素をカプセルに入れて全方位からレーザを照射、圧縮し、別の
レーザで点火、燃焼して、飛び出した中性子の運動エネルギーを熱エネルギ
ーに変換して発電するというもの。原発で行われる核分裂は連鎖的反応で制
御が難しいが、核融合は一度きりの反応で、二酸化炭素なども排出しない。
研究の発端は人口増加による食糧不足問題の解決だった。そこで大出力レー
ザ光を使った植物工場を構想。1997年から核融合発電に必要となる大出力レ
ーザの開発に着手。2006年には浜松ホトニクス産業開発研究所を設立した。
このような研究所を持つ民間企業は世界で唯一。着々と技術確立を進めてい
る。SDGsの7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」に貢献。 
 当社はソリューションプロバイダーとして課題解決し高付加価値製品を提
供。その対価でさらなる貢献をする付加価値創造サイクルで活動。光を使っ
て未知未踏領域を開拓することで、人類に役立ち、生き様を変えるような新
しい産業を創成する心意気で研究開発を進めている。


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