『藤井聡太の才能と大山康晴の持続力』
講師 将棋棋士九段 青野照市 氏
【講演概要】
焼津市出身。15歳で静岡の廣津久雄九段(当時は八段)の弟子になり、21歳でプロ棋士となる。30歳の時にA級になった。2年前に引退。棋士人生50年。 将棋はインドのチャトランガというゲームが発祥と言われる。それが西洋でチェス、東洋で、中国のシャンチー、韓国のチャンギ、タイのマークルック、日本の将棋になった。他のゲームと現在の将棋が違うのは、取った駒が使えること。戦後GHQが升田幸三九段を呼んで「将棋は捕虜まで戦争に駆り出すのか」と言ったという話がある。升田九段は「チェスは敵を殺すだけだが、日本の将棋は相手の国の兵隊を同じ位で仲間として扱うのだ」と答えたという。 将棋の世界は、東大出身で26歳の年齢制限ぎりぎりでプロ棋士になった谷合廣紀五段や、小学生の頃から将棋道場と雀荘しか入ったことがないという先崎学九段など、いろいろな人が共存しているところがおもしろい。自分が奨励会時代にほとんど勝てなかった真部一男九段は感覚的なものがすごかった。彼の師匠だった加藤治郎名誉九段に「自分の欠点に早く気がつけ」と言われて考え、自分は棋譜並べをやめて絵画や音楽の鑑賞を通して右脳を鍛えた。その成果で長く現役ができたのかもしれない。真部九段は右利きだったが、右脳が活性化するということでずっと左手で指していた。感覚的な脳を鍛えることが長持ちする秘訣かと思う。 さて、藤井聡太竜王・名人はなぜあんなに強いのか?彼は毎年開かれる詰将棋解答選手権で、小学校6年から5年続けて優勝している。それは普通ありえないことだ。彼の終盤力、詰将棋を解く能力の強さ。彼は計算する力が非常に優れている。そしてもう一つは、感覚的な能力。2015年に行われた将棋電脳戦FINALでプロ棋士側が3勝2敗で初めて勝ったが、この時コンピュータが打ってしまった手は、人間のプロ棋士なら絶対にやらない手だった。将棋には「幸せになる手」と「幸せにならない手」がある。だから最初から読まない。その感覚が藤井さんは優れている。なぜこんな発想ができるんだ?という常識から外れた驚くような手が出る。藤井さんは威圧感が全く無く、座布団の上にパソコンが載っているような感じなのだが、どんどん1手ずつ指し手で押されてくるという恐怖感があるので、「この人には勝てないな」と思ってしまう。彼は強さということにおいては今までの記録を全て抜いている。ただ、大山康晴十五世名人の「69歳でA級」というのは抜けるような気がしない。大山先生は何がすごかったかと思うのだが、先生の感想戦を聞いていると、「ここにこの駒があったらおかしいよね」と言う。画家の「ここにこの色を使ったらだめだ」みたいな言い方。「縦に読むのではなくて、広く読む、感覚的に読む」というものでトップを守っていた大山十五世の将棋観だ。 浜松に神谷広志八段、東伊豆に弟子の八代弥八段。プロ棋士を静岡から絶やさないようにしていきたいと思っている。子どもたちを育てるとともに、タイトル戦を誘致するために活動もしている。ついこの間浜松で王位戦があったが、秋は三嶋大社での竜王戦、来年早々には静岡新聞社さん主宰の棋王戦を焼津でやるので、注目していただければと思う。
2026年7月24日(金)21世紀倶楽部月例セミナー
『藤井聡太の才能と大山康晴の持続力』
講師 将棋棋士九段 青野照市 氏
【講演概要】
焼津市出身。15歳で静岡の廣津久雄九段(当時は八段)の弟子になり、21歳でプロ棋士となる。30歳の時にA級になった。2年前に引退。棋士人生50年。
将棋はインドのチャトランガというゲームが発祥と言われる。それが西洋でチェス、東洋で、中国のシャンチー、韓国のチャンギ、タイのマークルック、日本の将棋になった。他のゲームと現在の将棋が違うのは、取った駒が使えること。戦後GHQが升田幸三九段を呼んで「将棋は捕虜まで戦争に駆り出すのか」と言ったという話がある。升田九段は「チェスは敵を殺すだけだが、日本の将棋は相手の国の兵隊を同じ位で仲間として扱うのだ」と答えたという。
将棋の世界は、東大出身で26歳の年齢制限ぎりぎりでプロ棋士になった谷合廣紀五段や、小学生の頃から将棋道場と雀荘しか入ったことがないという先崎学九段など、いろいろな人が共存しているところがおもしろい。自分が奨励会時代にほとんど勝てなかった真部一男九段は感覚的なものがすごかった。彼の師匠だった加藤治郎名誉九段に「自分の欠点に早く気がつけ」と言われて考え、自分は棋譜並べをやめて絵画や音楽の鑑賞を通して右脳を鍛えた。その成果で長く現役ができたのかもしれない。真部九段は右利きだったが、右脳が活性化するということでずっと左手で指していた。感覚的な脳を鍛えることが長持ちする秘訣かと思う。
さて、藤井聡太竜王・名人はなぜあんなに強いのか?彼は毎年開かれる詰将棋解答選手権で、小学校6年から5年続けて優勝している。それは普通ありえないことだ。彼の終盤力、詰将棋を解く能力の強さ。彼は計算する力が非常に優れている。そしてもう一つは、感覚的な能力。2015年に行われた将棋電脳戦FINALでプロ棋士側が3勝2敗で初めて勝ったが、この時コンピュータが打ってしまった手は、人間のプロ棋士なら絶対にやらない手だった。将棋には「幸せになる手」と「幸せにならない手」がある。だから最初から読まない。その感覚が藤井さんは優れている。なぜこんな発想ができるんだ?という常識から外れた驚くような手が出る。藤井さんは威圧感が全く無く、座布団の上にパソコンが載っているような感じなのだが、どんどん1手ずつ指し手で押されてくるという恐怖感があるので、「この人には勝てないな」と思ってしまう。彼は強さということにおいては今までの記録を全て抜いている。ただ、大山康晴十五世名人の「69歳でA級」というのは抜けるような気がしない。大山先生は何がすごかったかと思うのだが、先生の感想戦を聞いていると、「ここにこの駒があったらおかしいよね」と言う。画家の「ここにこの色を使ったらだめだ」みたいな言い方。「縦に読むのではなくて、広く読む、感覚的に読む」というものでトップを守っていた大山十五世の将棋観だ。
浜松に神谷広志八段、東伊豆に弟子の八代弥八段。プロ棋士を静岡から絶やさないようにしていきたいと思っている。子どもたちを育てるとともに、タイトル戦を誘致するために活動もしている。ついこの間浜松で王位戦があったが、秋は三嶋大社での竜王戦、来年早々には静岡新聞社さん主宰の棋王戦を焼津でやるので、注目していただければと思う。