『地方における若者流出の実態〜静岡県西部地域の実情〜』
講師 一般財団法人 静岡経済研究所 理事長 馬瀬和人 氏
【講演概要】
人口の増減には出生数-死亡数の「自然動態」と、転入数-転出数の「社会動態」がある。日本では自然減が大きな課題だが、地方都市では人口の流出という社会動態が自然減に拍車をかけている。若者世代については「進学や就職を機に都市部へ流出」「特に女性の流出が多い」「出て行ったまま帰ってこない」という通説がある。静岡県は転出超過者数が男女とも全国でワースト1位。10代で域外へ転出した若者が、20代の転入でどの程度回復したかを示す「若者回復率」という指標があるが、静岡県全体の日本人では男性44.9%、女性9.1%。浜松市は外国人を含む総人口では男性396.6%、女性71.2%だが、日本人だけだと男性67.9%、女性18.1%。区別では、中央区は回復率が高いが、天竜区は10代も20代も減少。浜松市の15歳から39歳の転入率・転出率は県平均を下回っており、流動性は低いエリアといえる。主な転出入先としては、近隣の湖西市、袋井市、掛川市などからは転入超過だが、愛知県、東京都、神奈川県、関西方面については転出超過。浜松市に住む外国人の国籍はブラジル、ベトナム、フィリピンの順に多い。浜松市以外の西部地区6市1町の若者回復率は2極化。総人口では磐田市、袋井市、掛川市、菊川市の回復率は高いが、湖西市、御前崎市、森町は10代、20代ともに転出超過。日本人に限定すると女性で100%を超えているところはない。15~39歳の転入率・転出率は浜松市より流動性が高い。御前崎市以外は国外からの転入率が県平均より高く、外国人労働者に頼っていることが特徴だ。近い地域での移動が多く、転出入先では浜松市が多い。愛知県、東京都、神奈川県、関西方面については転出超過。これらのことから、通説通り日本人の若者の回復率は低く、特に女性の回復率は極めて低いことがわかる。また、地方では外国人の存在感が大きくなってきている。ただし転入率、転出率とも20%前後で、4分の3の人たちは地元に定着しているという事実もあり、その人たちの意見を聞くことも大事である。 男女共同参画白書のデータによれば、女性が地方に戻らない理由は、「希望する進学先が少なかった」「やりたい仕事や就職先が少なかった」が多い。仕事は人生の大きなファクター。行政ではなく、民間企業がやりがいのある仕事をしっかり女性に与えられるかが重要だ。もう一つ、「地元から離れたかった」「親や周囲の人の干渉から逃れたかった」という理由が男性より圧倒的に多いことも特徴である。打開策の事例として兵庫県豊岡市の「ワークイノベーション推進会議」「あんしんカンパニー制度」がある。女性が働きたい仕事・職場への改革に積極的に取り組む事業所を増やし、さまざまな情報や成果を地域の財産として共有することに務めている。もう一つは岐阜県岐阜市の「ぎふし共育都市プロジェクト」。子育ては母親の役割という固定概念を打破し『家庭の子育て力』と『地域・社会の子育て力』の育成を柱とする。岐阜市は社会減が続いていたが、2022年度からは3年連続社会増に転じたという成果が上がっている。 人口減少はもはや行政だけで解決できる事象ではない。民間企業、経済団体が行動を起こすことが大事。そして当事者の女性の意見をしっかり聞いて、解決策を導き出すことが重要だ。
2026年4月23日(木)21世紀倶楽部月例セミナー
『地方における若者流出の実態〜静岡県西部地域の実情〜』
講師 一般財団法人 静岡経済研究所 理事長 馬瀬和人 氏
【講演概要】
人口の増減には出生数-死亡数の「自然動態」と、転入数-転出数の「社会動態」がある。日本では自然減が大きな課題だが、地方都市では人口の流出という社会動態が自然減に拍車をかけている。若者世代については「進学や就職を機に都市部へ流出」「特に女性の流出が多い」「出て行ったまま帰ってこない」という通説がある。静岡県は転出超過者数が男女とも全国でワースト1位。10代で域外へ転出した若者が、20代の転入でどの程度回復したかを示す「若者回復率」という指標があるが、静岡県全体の日本人では男性44.9%、女性9.1%。浜松市は外国人を含む総人口では男性396.6%、女性71.2%だが、日本人だけだと男性67.9%、女性18.1%。区別では、中央区は回復率が高いが、天竜区は10代も20代も減少。浜松市の15歳から39歳の転入率・転出率は県平均を下回っており、流動性は低いエリアといえる。主な転出入先としては、近隣の湖西市、袋井市、掛川市などからは転入超過だが、愛知県、東京都、神奈川県、関西方面については転出超過。浜松市に住む外国人の国籍はブラジル、ベトナム、フィリピンの順に多い。浜松市以外の西部地区6市1町の若者回復率は2極化。総人口では磐田市、袋井市、掛川市、菊川市の回復率は高いが、湖西市、御前崎市、森町は10代、20代ともに転出超過。日本人に限定すると女性で100%を超えているところはない。15~39歳の転入率・転出率は浜松市より流動性が高い。御前崎市以外は国外からの転入率が県平均より高く、外国人労働者に頼っていることが特徴だ。近い地域での移動が多く、転出入先では浜松市が多い。愛知県、東京都、神奈川県、関西方面については転出超過。これらのことから、通説通り日本人の若者の回復率は低く、特に女性の回復率は極めて低いことがわかる。また、地方では外国人の存在感が大きくなってきている。ただし転入率、転出率とも20%前後で、4分の3の人たちは地元に定着しているという事実もあり、その人たちの意見を聞くことも大事である。
男女共同参画白書のデータによれば、女性が地方に戻らない理由は、「希望する進学先が少なかった」「やりたい仕事や就職先が少なかった」が多い。仕事は人生の大きなファクター。行政ではなく、民間企業がやりがいのある仕事をしっかり女性に与えられるかが重要だ。もう一つ、「地元から離れたかった」「親や周囲の人の干渉から逃れたかった」という理由が男性より圧倒的に多いことも特徴である。打開策の事例として兵庫県豊岡市の「ワークイノベーション推進会議」「あんしんカンパニー制度」がある。女性が働きたい仕事・職場への改革に積極的に取り組む事業所を増やし、さまざまな情報や成果を地域の財産として共有することに務めている。もう一つは岐阜県岐阜市の「ぎふし共育都市プロジェクト」。子育ては母親の役割という固定概念を打破し『家庭の子育て力』と『地域・社会の子育て力』の育成を柱とする。岐阜市は社会減が続いていたが、2022年度からは3年連続社会増に転じたという成果が上がっている。
人口減少はもはや行政だけで解決できる事象ではない。民間企業、経済団体が行動を起こすことが大事。そして当事者の女性の意見をしっかり聞いて、解決策を導き出すことが重要だ。