
『静岡における宇宙・航空産業のポテンシャル』
講師 羽佐間研究所 所長 増田和三 氏
【講演概要】
焼津市出身。アポロの月面着陸を見て宇宙の仕事を志す。名古屋大学工学部前期博士課程修了後、三菱重工入社。1993年社内奨学金を得てマサチューセッツ工科大学に留学。帰国後宇宙ステーション補給機システム設計に携わる。役職者定年を機に静岡に戻り、2015年から今年3月まで静岡理工科大学教授。現在は宇宙開発と地元の子ども向け活動を行う羽佐間研究所を藤枝に開設するほか、JAXAの宇宙戦略基金審査員、名古屋大学非常勤講師などを務める。
三菱重工での最初の仕事は無人有翼往還機(HOPE)の再突入飛行制御だったが、これは開発取りやめに。次の再突入実験機(OREX)は飛行成功。そして宇宙ステーション補給機(HTV)には20年間携わった。国際宇宙ステーション(ISS)は2009年から実運用が開始され、日本人宇宙飛行士が長期滞在。その間に9機のHTVが物資を運んだ。HTVは6トンの物資補給能力を持つ大型補給機で、船内外への大型物資を補給可能。最大の貢献は自律的な軌道上の輸送手段を確立したこと。最後の仕事として有人輸送機や月・惑星への探査機などにつながる次世代の軌道上輸送機を提案。10月21日にそのHTV-Xの初号機が打ち上げ予定だ。
静岡に戻ってからは、無人航空機開発を県に提案。無人航空機にはマルチロータ(ドローン)、40年以上の実績のあるヤマハの無人ヘリコプターなどがあるが、提案した垂直離着陸機は時速100キロ以上で将来的には100キロくらいの荷物が運べるもの。静岡県は、大正時代に日本初の旅客機が浜松で開発され、昭和初期には東京~下田~清水の定期航空路があった。現在は空港・飛行場が3カ所あり、フジドリームエアラインズ、ヤマハの無人ヘリコプターなど航空機産業と関わりの深い場所。関連の業種や人材も多く、製品の開発製造能力があり、ポテンシャルは高い。無人航空機の最大のメリットは「飛び越える」ということで、袋井から下田まで40分。災害時にもダイレクトに行ける。静岡理工科大学に拠点を置き、2016~18年、県の「次世代無人航空機開発・実証業務」事業としてプロト機を開発し飛行試験を実施し、新たなビジネスモデルを構築。社会実装事例として清水港でのマルチロータによる危機管理システム、無人航空機によるコンビニ物流などを提案。2024年3月には県事業でヤマハの無人ヘリコプターを使用した三保・土肥間の駿河湾横断飛行試験が行われた。今年6月には県主導で無人航空機や空飛ぶクルマなどの産業集積に向けたネットワーク組織「次世代エアモビリティ開発推進コンソーシアム」が立ち上がり、県内の試験飛行場を使って実用化をめざしている。
大学退官後は悠々自適に過ごそうと思っていたが、2年前に「静岡で宇宙開発をやりませんか?」と声がかかった。宇宙開発は実は地上への波及がなければ儲からない。大学にいる頃から紙飛行機のような小型軽量の有翼型再突入機を研究・試作していたが、そこで、この開発を推進中。燃料には過酸化水素エネルギーを考えていて、これを地上に反映したら太陽と水で完結する究極の「ポツンと一軒家」ができる技術だ。今は、月の開発にも興味がある。だから「明日、月に行かない?」と言われたらすぐに行けるように、英語と体力を常に整えている。






































































































2025年10月28日(火)21世紀倶楽部月例セミナー 【健康経営について】
浜松市の健康経営支援について
〜浜松ウェルネスプロジェクト〜
講師 浜松市副市長 山名 裕 氏
【講演概要】
浜松市は健康長寿日本一、産業力を基盤に発展してきたという強みを活かし、ウエルネスシティ(予防・健幸都市)の実現を目指す浜松ウエルネスプロジェクトを推進している。市民の健康増進、地域企業の健康経営の促進、ヘルスケア産業の創出を3つの柱に、浜松ウエルネス推進協議会と浜松ウエルネス・ラボという2つの官民連携プラットフォームを組織し、様々な事業を創出・展開中。2024年にはウエルネスアンバサダー制度を創設し、市民への情報発信を行っている。
健康経営とは、従業員の健康保持・増進の取組を投資と考え、健康管理を経営的視点から戦略的に実践することである。国には健康経営優良法人の顕彰制度がある。健康経営の効果は、従業員の健康状態改善、ヘルスリテラシーの向上、組織の活性化、企業ブランドイメージの向上、人材の確保・定着等と言われている。市内の健康経営優良法人の認定数は昨年度220者まで増加する一方で、制度を知らない企業も5割存在。啓発活動としてチラシ配布、セミナー等を実施している。また、公共調達や制度融資における優遇措置、保健師による職場での講座開催、浜松市ウエルネスプロジェクトHPの活用、健康経営の取組を行う中小企業等への補助金交付、さらに今年度の新規事業として、健康投資効果分析事業を実施している。昨年は市職員向けに健康経営の取り組み方針を示す「浜松健幸宣言」を策定・公表し、今年3月、浜松市は政令市初、県内自治体初となる「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)」に認定された。健康経営は地域の持続的発展のために不可欠である。
「健康経営」取り組み事例
〜社員に寄り添う健康づくり〜
講師 株式会社アトランス 代表取締役 渡邉次彦 氏
【講演概要】
当社は浜松市中里町に本社を持つ運送会社である。取組のきっかけは社員の高齢化、トラック業界だけが健康起因事故が増えているという課題だった。健康経営の必要性を感じていたが、コストや手間をかけられない。協会けんぽ静岡支部様から、「ふじのくに健康宣言」をして健康経営優良法人の認定を目指してはどうかとご提案を受け、取組を始めた。総務の社員2名を健康づくり担当者に任命。具体的には、再検査対象者へのイエローカード、ピンクカードによる受診勧奨、浜松市出張講座、ブレス浜松様による健康体操実演、常葉大学健康プロデュース学部様による鍼灸講座などを受講、「健康だより」を発行、月1回エコ&安全ミーティングを実施、保健師による保健指導を受けた。社内飲料自販機にトマトジュースなどのラインナップを加え、熱中症予防啓発として期間限定50円で販売、メンタル不調者に対し社外相談窓口を設置した。成果としては、要再検査者が19%減り、健康な社員が増加、ヘルスリテラシーが向上した。若者の採用が増え、平均年齢の上昇を抑制、第三者機関による企業風土調査で社員満足度が改善し、2022年には浜松ウエルネスアワードの浜松ウエルネス大賞(健康経営部門)を受賞した。サントリーウエルネスOnline、浜松市SDGs推進プラットフォームでの情報発信、健康経営を進める上でのポイントは、社員が主役、できるだけコストをかけない、パートナー様としっかり連携をしていくこと。健康経営は社員と会社が共に同じ方向に歩むことのできるツールである。