日時:2021年5月10日 13:51 投稿者:pt21c

講師:静岡県水産・海洋技術研究所 浜名湖分場長 髙木毅 氏
演題:浜名湖の幸と研究所
【講演概要】
浜名湖は海水と淡水が交じり合う汽水湖。複雑な地形のため面積に
対して湖岸の延長距離が長く環境的にも多様性がある。
ウナギ養殖は明治24 年に新居町で始まったと記録にあり,浜名湖
が発祥と言える。明治37年に設置された静岡県初の水産研究所は6
年後に一旦閉鎖されたが、その後昭和9年、弁天島に浜名湖分場と
して開設された 。昭和49年にはウナギ人工ふ化を世界で2番目(1
番の北海道大学に2か月遅れ)に成功。人工シラスウナギを誕生させ
る技術は確立しており、現在は国と協働で人工シラスウナギの大量
生産技術の開発に取り組んでいる。
 浜名湖の牡蠣は品質が良く、広島産の2倍以上の価格で取り引き
されている。春から夏は湖南部、秋から冬は餌であるプランクトンが
豊富な湖北部へ移動させる、手間をかけた生育方法により高品質を誇
っている。
 海苔は湖南部で主にアオノリを養殖し、クロノリとアオノリを混ぜ
るのが特長。アサリ採貝漁業も機械を使わず、大きな熊手のような道
具を使い人手で行っていることが浜名湖ならではといえる 。
 湖内の漁業種類別漁獲量でも平成24年には90%以上を占めていたア
サリは、ここ数年減少が続き地域経済にも大きな影響を与えている。
アサリは卵と精子が受精卵となり浮遊幼生になると、2~3週間浜名
湖内を漂い大きくなっていく。昨年の浮遊幼生出現調査で、過去と比
べて減少が明らかとなり非常に問題視している。クロダイがアサリを
食べてしまっている影響もあるとみられ、その対策も必要と考えてい
る。
 アサリ以外の漁獲量の推移を見ても、約30年前の平成に入ったころ
から一直線に減少していることが分かる。当時は都田ダムの完成、公
共下水の高度処理開始、削澪事業など湖の水質や流れを変える出来事
が続いた。
 実際、浜名湖の環境変化調査によって、栄養バランスへの影響が浮
かび上がってきた。「植物プランクトンが減ったことで、湖水中の窒
素・リンの総量が減少したのではないか」「1990年代から上昇に
転じている塩分量は、河川水の流入量が減っているためではないか」
「水温上昇も生物に大きな影響を与えているのではないか」など。
 30 年前の豊かな浜名湖を復活させることを目指し、今後の更なる因
果関係調査の必要性を感じている。きれいな浜名湖は生産性が悪く魚が
少なくなる。美しさを目指すか豊かさを目指すか、皆さんとコンセンサ
スを取りながら進めていきたい。


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